<チェジュ航空旅客機事故>メーデー発信の1分前に位置追跡途絶える…電力シャットダウンの可能性
先月29日、韓国務安(ムアン)空港で事故が発生したチェジュ航空の旅客機は、鳥類と衝突した後、両方のエンジンが故障して機内の電源供給が中断された可能性があるとする見方が優勢となっている。 【写真】チェジュ航空旅客機事故で機長の最後の姿とみられる様子 専門家はその根拠として「電波基盤の航空機追跡システム(ADS-B)」が送信する事故飛行機の位置情報が当日午前8時58分を最後に送信されなかった点を挙げている。航空機位置情報は分単位で送信・記録されるが、パイロットが管制塔との交信で「メーデー」(国際遭難要請)を発信した8時59分には位置情報が消えた。航空機エンジン2基のうち1基でも作動していれば機内に電力が供給されてADS-Bを作動させることができる。 経歴20年以上の現職機長Aさんは「ADS-Bはパイロットが故意にオフにするのも大変な装置」とし「ADS-Bが消えたということは鳥類衝突(バードストライク)当時、航空機自体に大きな衝撃が加えられた可能性が高いという意味」と説明した。航空専門家は電源シャットダウン以降、パイロットと管制塔間の無電交信はバッテリーに残った少量の電源で行われたとみている。 事故飛行機の胴体着陸当時、ランディングギアとフラップ(航空機離着陸時の速度を調節する装置)、エンジン逆推力、スピードブレーキなどが作動しなかったのも両側エンジンの故障で電源がシャットダウンしたことが原因である可能性が高いという分析が出ている。カトリック関東大学航空運航学科のチョン・ユンシク教授は「航空機エンジン一つを通じてでも電源が供給されていればオートパイロット(自動操縦装置)で着陸でき、他の電子機器もほぼ正常に稼動する」と説明した。 ただし今回の惨事の事故原因究明は遅れる見通しだ。韓国国内ではブラックボックスの分析が難しく、米国に送ることになったためだ。音声記録装置は比較的良好な状態で見つかったが、フライトレコーダーは外観が一部毀損し、電源部分と保存装置を連結するコネクター(帯のように薄く幅が広い形)が紛失した状態だった。国土交通部関係者は「韓国国内で代替品を手に入れることは難しく、これを装置と接合する過程も精巧な技術が必要」とし「ただし、音声記録装置は(音声ファイル転換まで)2日ほどかかる予定」と説明した。 同部は1日の記者会見で務安空港滑走路延長工事で北側滑走路を従来の2800メートルから2500メートルに短縮して運用していた事実を確認したと明らかにした。長さ自体は航空機の離着陸に問題がない。ただし今回の事故が滑走路の3分の1地点(開始点から1200メートル地点)から胴体着陸を行った点を勘案すると、一部影響を及ぼした可能性も出ている。また、1回目の着陸に失敗した事故機が2回目の着陸を試みたときに滑走路の反対方向(第19滑走路)に着陸したのはパイロットと管制官の間の合意事項だったと明らかにした。