ロシア、ウクライナに「もし勝利」でも大損失が確実 地政学・軍事・経済の全てで〝赤字〟
ロシアによるウクライナ侵略の早期終結を掲げるトランプ次期米大統領は1月20日の新政権発足後、本格的にロシアとウクライナに停戦を働きかける見通しだ。仮に一部のウクライナ領の実効支配をロシアに認める条件で停戦が成立すれば、ロシアは一定の「勝利」を収める形となる。ただ、その場合でも、過去約3年間にわたる侵略戦争でロシアが払った代償は地政学、軍事、経済の全ての面で膨大で、差し引きで言えば大赤字が確実だ。 【画像】ウクライナ新兵器「ドラゴンドローン」…2200度の溶解鉄降らせる ■一部領土で実効支配を受忍も トランプ氏の停戦案の一部には、現在の前線を停戦ラインとして紛争を凍結させることが含まれているとされる。そうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は最近、北大西洋条約機構(NATO)からウクライナの安全が保証されるのであれば、占領下にある一部領土についてロシアの実効支配を受忍することは可能だとの考えを表明。「停戦には全領土からの露軍の撤退が必要だ」としてきた従来の立場を緩和した。 これに対してプーチン露大統領は、ウクライナがNATO加盟方針を放棄して「中立化」することや、ウクライナ南部クリミア半島と東・南部4州をロシアに割譲することを停戦条件に掲げている。ただ、プーチン氏は24年秋以降、詳細への言及は避けつつも、ロシアには「合理的な妥協」を行う用意があるとも発言。ウクライナのNATO加盟や既存占領地の放棄は容認しないとしても、現在の前線で停戦することには同意する可能性がある。 この場合、ロシアは事実上、ウクライナ領の一部を獲得し、軍事作戦の開始当初に掲げた「ウクライナ東部のロシア系住民の保護」という目標の一つを達成する形となる。 しかし、仮にロシアが一部ウクライナ領の支配という「利益」を得たとしても、そのために被った損失は多岐にわたる。 その一つは地政学的損失だ。ロシアは早期にウクライナを降伏させることに失敗し、軍事大国としての威信に傷が付いた。また、従来は中立を維持していた隣国フィンランドとスウェーデンのNATO加盟を招き、露欧間の戦略海域であるバルト海は「NATOの海」と化してしまった。 ■「勢力圏」を相次いで喪失