賞味期限わずか5時間の「電氣餅」 つきたてふわとろを多彩な和菓子にして
東京・渋谷の和菓子店「あいと電氣餅(でんきもち)店」。店名にもなっている「電氣餅」で作られたお菓子はすべて「賞味期限5時間」とされている。「新鮮なものを新鮮なうちに」-。そう店主が語る話題の「電氣餅」の秘密を探った。 【写真】厨房では、電気餅を使ったさまざまなお菓子が丁寧に手作りされている ■由来は電動餅つき機 代々木公園から徒歩5分ほど。静かな住宅地に「あいと電氣餅店」はある。もともとは福島県南相馬市で大正5年に創業した「宍戸青果店」(後の「宍戸電氣餅屋」)。これを引き継ぐかたちで、店主の鈴木瞳さん(45)が令和3年11月にオープンした。 「電氣餅」という愛称は100年以上前の創業当時、電動の餅つき機を導入している店が珍しかったことから、客らが親しみを込めてつけたとされる。電気でついた餅、というわけだ。 ■保存料や添加物は不使用、砂糖も抑えて 店に入ると、蒸したもち米の芳醇(ほうじゅん)な香りに包まれた。店頭には看板商品の生大福をはじめ、みたらし団子やきなこ餅など、電氣餅を使ったあらゆる和菓子が並んでいる。 「ターゲットは私自身。自分が納得したものしか出さない」 そう語る鈴木さんに妥協はない。材料や調味料は、すべて味見してから契約先を決めるなど、強いこだわりをもつ。 電氣餅の原料となるもち米は、もち米の王様とも呼ばれる新潟県産こがねもち。もち米に含ませる水の量や蒸し方、つく回数は湿度や温度によって、毎日微調整を加える。蒸し上がったもち米を臼に入れると、杵のような円柱形の機械が約1秒おきにペタペタとリズミカルに動き出す。 「新鮮なものを新鮮なうちに食べてほしい」。そんな思いから、保存料や添加物は一切使わず、砂糖の量も極限まで抑えている。だからこそ、おいしさを保証できる時間はごくわずか。「5時間以上は怖くて出せない」のだという。 ■作りたてを求めて遠方からも来客 手間や労力をいとわず完成された商品のうち、一番人気は「生大福」(320円)。「ふわとろ」とした餅と、北海道産小豆を使った甘さ控えめのあんことの相性が抜群。あっという間に口のなかでなくなってしまう。 これからの季節、身も心も温まる「電氣餅のお汁粉/ぜんざい」(760円)もおすすめ。程よい甘さの汁につかった餅は、すぐ溶けそうなほど滑らか。小豆島産だしじょうゆの風味が香ばしい揚げ焼き餅(320円)や、国産高級のりと電氣餅が調和する磯辺焼き(300円)も人気だという。