人が集中して話を聞けるのは〈4秒〉まで…“相手に伝わらない”を回避する「飽きられない話し方」の極意【大東文化大学名誉教授が解説】
結論を伝える前には「場を温める」のも重要
「話は手短に」「結論から話す」「動詞の状況説明にはオノマトペが有効」と解説しました。しかし、実はこれらには矛盾があります。それは、日本語は動詞が最後に来るという構造との矛盾です。 正確に言うと、「常に動詞が最後に来る」のではなく、「動詞が最後に来ても話が通じる」と言った方がいいでしょう。「私は卵を食べました」は、英語では「I ate eggs」であり動詞が先です。英語で動詞を後に添えた場合、「私」と「卵」のどちらがどちらを食べたのかわからず、意味が通じないことにもなりかねません。 この理屈から見ると、動詞が最後なのに結論から言うのとは矛盾。動詞にオノマトペが必要なのに手短にいうこととの矛盾が生じます。 ここでも重要になるのが、「伝える」ためのゴールに立ち、相手の側から見た場合、コミュニケーションの状況をどう感じるのかです。いきなり「どうですか?」と聞かれたら、驚くでしょうし、失礼だと感じるでしょう。「これが結論です」と言われても押しつけられたと反感を買うだけです。 つまり、相手に「いきなり」と感じさせないことが大切です。語彙力の効果や「伝わる」の先には、相手の心の動きが存在します。その心の動きが、驚きや反発ではなく、共鳴や共振であることが「伝わる」につながります。 結論から話しても反発を買わないためには、相手の心にウォーミングアップの準備時間が必要です。商談であれば、「天気・気候の話」は万能です。こちらが出向けば、暑さや寒さは相手の気遣いを自然と導き出します。日本では、「暑い中、わざわざありがとうございます」までが、コミュニケーションの入口として、誰もが共有している感覚だからです。 会議であれば全員が揃うまでに、今日の目的を少しずつ話題にするのもいいでしょう。会議開始と同時にゼロからスタートせず、「事前に少し話したのですが」とすでに場が温まっている状況であり、これからの話は、全体に共有するための説明であると感じれば「自分も聞かなくては」と集中してもらえるはずです。 相手に心の準備をしてもらう。そのための導入トークを自然に演出できれば、その後の「結論から話す」「手短に話す」は、共通のリズムとして闊達な会話や、状況を前に進めるためのコミュニケーションへと結びついていきます。 【ポイント】 ●いきなり結論から話しても相手の反発を買う可能性が高い。 ●「伝える」ことの目的は、相手の心を動かすこと。 ●相手の心の共鳴や共振を得るには、「いきなり」を回避するための心の助走が必要。そのためのコミュニケーションを心がける。 【監修】山口 謡司 大東文化大学名誉教授、平成国際大学新学部設置準備室学術顧問 1963年、長崎県に生まれる。フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経る。 著書にはベストセラー『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)をはじめ、『文豪の凄い語彙力』『一字違いの語彙力』『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』『ステップアップ0歳音読』『いい子が生まれる 胎教音読』、監修に『頭のいい一級の語彙力集成』(以上、さくら舎)などがある。
山口 謡司