ディズニーダンサーをやるタイミングはもうない――コロナで「諦めた」夢、翻弄される若者たち
しかし、「コロナで夢を諦めた」という感覚はないという。そもそも親という後ろ盾がないからだ。 「自分ができる範囲でかなえられそうな方法を探すというか。学校の音楽の部活に入ったり、友達とバンドを組んで、地元の高校生が集まってやるようなイベントに出たり」 やりたいことを、自分のやれる範囲でするという姿勢には、達観すら感じる。ただ、今後就職してひとりで生活していきたいと考えているなかで、不安はあるという。 「やっぱり自分の場合は、働き続けないと、本当に家がなくなるので。ちゃんと働き続けられるかなっていう不安ですね。社員として就職したいです。ただ、高校1年から、ずっとアルバイト、アルバイトで生活してきたので、どっかで休みたいなっていうのもあって」
19歳にして「休みたい」と願ってしまうような生活で、就職に対するモチベーションも上げられないのが現状だという。いま休めたら何がしたいかを聞くと、そこにはやはりたけおさんにとっての原点があった。 「音楽はもう一回やりたいですね。バンドを組みたいです。バンドの4人とかでひとつのものを作り上げるっていうのは憧れます」
本人の特性に合った教育の機会が必要
コロナ禍でも若者たちは自力で道を切り開こうとしているが、ワクチン接種が始まった現在も、コロナ禍がいつ収束するのかはまだ不透明だ。たけおさんも含め、生活苦に直面する高校生を支援している認定NPO法人D×P(ディーピー)の理事長・今井紀明さんは、コロナ禍で苦境に陥った若者から相談を受ける機会が増えた。
「すでに社会関係資本や経済資本がある人にとっては、少しの休業や負荷は耐えられるかもしれないですが、それがない人には、コロナでの休業は大打撃になってしまうと思いますね。資本主義経済なので、どうしても格差は生まれると思うんですけど、いま特に若者に対して格差を是正する施策ってないですよね」 それは、今井さんに相談する層の変化にも表れているという。 「内定取り消しにあった大学生とか、親に経済的に頼れない大学生や専門学校生とか。女の子だと、もうパパ活をせざるをえなくて、それで苦しんでる場合もあります。偏差値が高い国立大の子からも相談が来るんですよね」