ディズニーダンサーをやるタイミングはもうない――コロナで「諦めた」夢、翻弄される若者たち
D×Pは、10代がLINEで進路や生活の相談ができる「ユキサキチャット」というサービスを提供しているが、コロナ禍の1年弱で、700人から4000人近くまで相談者が急増したという。そうした現状を受けて、今井さんは、10代が孤立せず生きていくための三つの重要なポイントを挙げる。 「一つ目は、生活の安心ですよね。食事ができて、暴力がないとか、基本的な生存の権利が保護されるような環境は絶対守られるべきです」 「二つ目は、セーフティーネットの役割を果たす相談先です。適度な距離感でアクセスできるオンライン上の相談先が必要だと思います。いまオンライン上で、自分の危機的なことを相談できる相談窓口は数が限られています。政府が整備してこなかったこと自体が大きな問題だと思います」 「三つ目は、教育の機会です。高校生たちと話してると、接客やレジなどの仕事が苦手な子も多いです。でも、D×Pがパソコンを寄贈したら、ゲーム制作や動画制作で会社に勤めている子もいるし、在宅ワークにつながった子もいます。本人の特性に合った仕事について学べる機会が必要なのではないかと思いますね」
バブル経済崩壊後の1990年代半ばから2000年代前半に社会に出た若者たちは、「就職氷河期世代」あるいは「ロスジェネ」と呼ばれることになった。2020年からは就職氷河期世代を対象とした国家公務員の中途採用試験も始まったが、それは就職氷河期世代の最初の世代が、約25年も政府から放置されていたことを意味する。コロナ禍に社会に出た世代も、放置される運命にあるのだろうか。菅義偉首相が掲げる政策理念「自助・共助・公助」における「公助」の責任が、いま問われている。 --- 今井紀明(いまい・のりあき) 認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長。2012年にD×Pを設立。オフライン(学校現場)とオンラインで生きづらさを抱えた若者に「つながる場」を届ける若者支援コミュニティーを作っている。 https://www.dreampossibility.com/supporter/ 撮影協力:葛西海浜公園、新宿LOFT