''ごみ''の山を''寄付''の山に。いわき市で生まれた「古着を燃やさないまちづくり」
福島県いわき市で、「古着を燃やさないまち」をつくろうと取り組んでいる団体がある。NPO法人「ザ・ピープル」（以下、ピープル）は市内13箇所、ほか県内8箇所に回収ボックスを設置し、まちの人たちが不要になった古着を回収している。 市役所やスーパーといった生活の動線上に設置されたボックスには、毎日多くの古着が集まる。週に4～5回の頻度で回収が行われ、トラックのコンテナいっぱいの古着が倉庫へと運ばれていく。
驚くべきは、年間250トンを超える古着の山のために、数々の「古着の出口」を作っていること。自分達で運営する古着店や、海外への寄付、災害時の支援物資、リメイクしての再流通、繊維としての再利用など......さまざまな再活用の手段を用意する。その仕組みのおかげで、いまでは回収した古着の九割以上を燃やすことなく、「次の使い道」へと送り出しているという。 日本において、家庭から手放される衣類は年間約75万トン、そのうちリサイクルやリユースされるものは全体の34.1％（※）だといわれている。そのことを思えば、ザ・ピープルがつくり上げた「九割を燃やさない」地域内での古着回収システムは、全国をみても珍しい規模だと言える。 ※参照：国民生活センター発行『国民生活』2021年4月 有志の市民団体からはじまったザ・ピープルは、どのようにして古着の循環システムをつくりあげたのか。同団体の前代表（※）・吉田さんに、お話を伺った。そこで見えてきたのは、古着の山を「寄付の山」として捉える意識づくりだった。
吉田 恵美子さん 特定非営利活動法人ザ・ピープル前理事長（※）。古着リサイクル活動を中心に住民主体のまちづくりを実践してきた。同団体に立ち上げ時から関わり、在宅障がい者自立支援事業、災害支援事業など、四半世紀にわたるピープルの活動を支え続けてきた。 ※2023年8月、吉田さんは健康上の理由により理事長職を退任
