''ごみ''の山を''寄付''の山に。いわき市で生まれた「古着を燃やさないまちづくり」
たくさんの方が倉庫を見学に来るんですが、みなさん驚かれるのは「古着のすえた匂いがしないね」ってことなんです。それは、市民の方々が回収ボックスに入れる前に、古着を洗濯してくれていたり、綺麗な状態のものを持ってきてくれたりするから。 こういう地元のみなさんの意識があるから、ピープルの古着回収のシステムは成り立っているんだと思います。 ── 仕組みを維持するなかで、一番大変なのが「協力してくれる人たちの意識づくり」だと思います。ピープルは長い時間をかけて、「古着を回収し、循環させる」というイメージをいわき市の人たちと共有してきたんですね。
一番もったいないのは何か? 活動の原点
約30年の歳月をかけて、古着の回収とリサイクルの仕組みを築き上げてきたピープル。その活動がはじまるきっかけは、たった一度の研修旅行にあったという。 ── 「ザ・ピープル」の活動をはじめたきっかけはなんだったんでしょう? 1990年に、いわき市が市民の女性を集めて海外研修へいくプログラムがあったんです。「いわき女性の翼」という名前で、女性の社会進出の文脈で開催されたもので。 そこで海外の街並みや町のシステムを見て回りました。ドイツに滞在したとき、自転車に乗っていたおじさんが路上のリサイクルコンテナにゴミを分別して捨てていて。日本にいるときには見たことのなかった「リサイクルが普通にある暮らし」に衝撃を受けたんです。 ── 海外で見たものを地域に還元したい、という思いがあったんですね。 それだけじゃなくて、何より一緒にいったメンバーとの出会いが素晴らしかったんです。同じような問題意識を持って語り合える人が、同じいわき市に、しかも女性で、こんなにいるんだって驚いた。そこから、何か一緒にやろうと言って市民活動をはじめたんです。 帰ってきてすぐはいろんなことをやっていたけど、あるとき市民にアンケートを取って。「ふだんゴミとして捨てているものの中で、もったいないと思うものはなんですか?」って問いかけに、「古着」って書く人がたくさんいて。それで古着リサイクルの活動に絞って活動するようになったんです。