考察『光る君へ』46話 矢を放つ勇猛な隆家(竜星涼)に、あの時の若造の面影はない。まひろ(吉高由里子)「刀伊の入寇」に遭遇、歴史の過渡期を目撃!
赤染衛門に共感しつつも
そのころ都では、赤染衛門(凰稀かなめ)が書き始めた『栄花物語』を読み、倫子がポカンとしていた。 倫子「殿の栄華の物語を書いてほしいと申したと思うが」「これ……宇多の帝から始まっているわ」 『栄花物語』の書き出しは、 「世始まりて後、この国の帝六十余代にならせ給ひにけれど、この次第書き尽くすべきにあらず。此方寄りての事を記すべき。世の中に、宇多の帝と申す帝おはしましけり」 (この世が始まって以来、この国の帝は六十代余りいらっしゃいますけれど、お一人お一人について書き尽くすことはできません。近年の御代から記すことにいたしましょう。宇多の帝と申される帝がいらっしゃいました) 宇多天皇は舞台となっている時代から130年以上前、道長の曾祖父が仕えた帝だ。そこから? となるかもしれないが、 赤染衛門「藤原を描くなら大化の改新から書きたいくらいに存じます」 赤染衛門先生は大真面目だ。わかる! 藤原がなぜこの時に隆盛を誇っているのか、それを描くなら大化の改新──645年乙巳の変、蘇我氏滅亡までさかのぼって語りたい。大化の改新の中心人物は藤原氏の祖、藤原鎌足(中臣鎌足)だからだ。 赤染衛門「かな文字で書く史書(歴史書)は、まだこの世にございませぬ」 コミカルな演出だが、とても大切なことを言っている。当時、公の文書はみな漢字で記されていた。歴史書の『古事記』や『日本書紀』『続日本紀』などもみな漢字である。かな文字(ひらがな)は主に女性が使うものとされていて、男性が使う場合は私的な手紙などに限られる。赤染衛門は、女性である自分が書き、多くの女性が読むことを意識して歴史書を書こうとしているのだ。齢60をこえて超大作に挑もうとする、その意気やよし! しかし、 倫子「もう……衛門の好きにしてよいわ」 あっ。この表情、わりと見たことある。歴史ファンが熱く語ったあと、相手が「無」の表情になってしまうやつだ……オーダーとは違うものができあがりそうな現状に、発注者の倫子様が諦めちゃった。赤染衛門に共感しつつも、倫子が気の毒になってしまった。
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