イッセー尾形が一人芝居を40年以上続ける理由「一人芝居の醍醐味は、意味を超えたところで観客と笑い合えること」
70歳を超えてなおテレビや映画や舞台で活躍するイッセー尾形さん。なかでも一人芝居は40年以上公演し続け、独自のスタイルを確立しています。そのお話は、いつまでも輝き続けるカッコいい大人としての含蓄あふれる内容でした。 PEOPLE NOW
名バイプレーヤーとして知られるイッセー尾形さん。映画やドラマではコメディからシリアスまで、変幻自在に様々なキャラクターを演じ分け、作品に深みを与えてくれる存在です。 その演技力を裏付けているのは、40年以上にわたって続けている一人芝居の公演です。なぜ一人で演じ続けるのか、何を表現したいのか。そこにはイッセー尾形流のカッコいい哲学がありました。
「僕は演劇人でも喜劇人でもないんです」
── イッセーさんはなぜ、俳優やコメディアンを目指そうと思ったのでしょうか。 イッセー尾形(以下、イッセー) 昔あった『てなもんや三度笠』というテレビ番組(※1)が楽しみで、喜劇人に対して胸躍るものがあったんだと思うんです。僕のルーツはやっぱりそこかな。 それで、ある時に『お笑いスター誕生!!』(※2)という素人参加の番組に小柳トムさんが一人芝居のコントで出場しているのを見て、「一人でも成り立つな」と思って僕も応募したんです。それで勝ち上がって、8週目までいった時にドラマ『意地悪ばあさん』(※3)のプロデューサーに呼ばれて……それがキャリアの始まりですね。 ※1:1962年から1968年に放送された伝説のテレビコメディ番組。 ※2:1980年から1986年に放送されたお笑いオーディション番組。 ※3:長谷川町子の4コマ漫画作品『いじわるばあさん』を原作として製作されたテレビドラマ。 ── 以来、様々なジャンルで活躍されていますが、一人芝居はずっと続けていますね。一人芝居の魅力は何ですか。
イッセー うーん。まぁ、向いてたんでしょうね。「僕の出身は何なのか」ってよく思うんですよ。演劇人なのか、喜劇人なのか。でも、どちらでもないんです。本当の演劇の一人芝居にしてはお笑いの要素が入っているし、かといって純粋たるお笑いじゃない。そんな風に人からも言われますし、自分でも言います。 先日、永六輔さんの著書『芸人たちの芸能史』(中央公論社)を「僕の芸のジャンルは何かな」って思いながら漠然と読んだらね、「僕は浪曲師(※4)が近いな」と思いました。演劇人より大衆性があっていいでしょ。 ※4:三味線を伴奏にして独特の節と語りで物語を進める語り芸(話芸)。 ── 「自分が何者か」は気になりますか。 イッセー こういうインタビューの時だけね。私は何者ですって言わなきゃいけなくなるから(笑)。