教員による「体罰」調べる方法が自治体によってバラバラ…専門家「隠蔽体質と批判されても仕方なし」
●アンケートを実施していない自治体も
体罰に関するアンケートを実施していない自治体もある。 その一つである広島県では、県立の学校(高校や特別支援学校)の場合、日常的な情報提供を受け付けつつ、性暴力を含めた体罰の相談窓口を開いている。市町立の小中学校の場合、各市町教委の権限でおこなうため、県教委として統一的な調査はない。 「体罰の疑いがある場合は、県教委が事情を聞きます。匿名でも受け付けていますが、相談者の意向を確認します。一方、市町立小中学校の場合、市町教委がアンケートをすることがあります。その結果は、県教委に報告があるものと、ないものがあります」(広島県担当者) 東広島市は、体罰・不適切指導のアンケートをしているが、統一的なフォーマットはない。アンケート内容も学校によってバラバラだ。2012年に不適切な指導をきっかけに自殺した男子中学生(14歳)の遺族は、市の体罰調査のアンケートを取り寄せて驚いたという。 「2023年度の市立中学校14校のアンケートのうち、体罰の設問が含まれていない学校がありました。不適切な指導の設問は1校も取り入れられていません。設問内容は学校ごとに異なり、学校に任せきりと感じました。市教委が中心となって、実態が正しく把握できるようなアンケートにしてほしいと思います」(遺族)
●アンケートに回答するほうも「躊躇する」
埼玉県でも、さいたま市(政令指定都市)を除いて、県教委は集計用のフォームとともにアンケートの参考例を示している。 子どもの権利条例を制定して、体罰を禁じる条文もある北本市では、桜井卓市議が体罰調査の内容を調べたところ、北本市教委は2022年度、「体罰」だけを調査対象にしていた。2023年度では「暴言・威嚇」も対象になったが、県教委への回答では「体罰」はゼロだった。 「私も保護者として、暴言や威嚇にあたる行為を目の当たりにしています。他の保護者からも聞いています。どの程度(頻度や内容)の暴言が体罰にあたるのか明示されておらず、回答すべきかどうかわからない児童・生徒が多いのではないでしょうか。 今の様式は、初めに体罰があったかどうかを問い、その後に具体的な行為を回答するようにしています。自身で体罰かどうかを判断することになり、回答するほうも躊躇してしまいます」(桜井議員) 2019年に熊本市立中学校の生徒が自殺した熊本市(政令指定都市)の場合、児童・生徒や保護者に対して、2022年と2024年に「体罰・暴言等に関するアンケート」をおこなった。 アンケートですべて把握するわけではなく、「体罰・暴言、そのほか不適切な行為」が疑われる場合、ホームページから「子どもを守る相談票」をダウンロードして、児童・生徒と保護者の名前を記入したうえで詳しい内容を書き込むようになっている。 この相談票をもとに、市教委の学校問題対応チームか学校の管理職が聞き取る。取り下げられない限り、最終的には「審議会」が判断する。ただし、2023年度のアンケートでは、体罰・暴言等の被害に遭った77.4%(342人)が届出をしなかった。