教員による「体罰」調べる方法が自治体によってバラバラ…専門家「隠蔽体質と批判されても仕方なし」
教職員による体罰や不適切な指導を調査する方法が自治体ごとにバラバラで、実態把握が不十分な原因の一つとなっている。体罰に関するアンケートを実施していない自治体もあり、専門家は「公教育に対する信頼を維持するため、国が統一の調査方針を掲げるべきだ」と指摘する。(ライター・渋井哲也)
●自治体によって調査方法や集計方法が異なっている
教職員による体罰は、学校教育法11条によって禁止されている。文部科学省は「体罰は、違法行為であるのみならず、児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え、教員等及び学校への信頼を失墜させる行為である」として、次のような行為を例としてあげている。 ・体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける ・授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちする ・立ち歩きの多い生徒を叱ったが聞かず、席につかないため、頬をつねって席につかせる ・放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室外に出ることを許さない ・別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない ・宿題を忘れた児童に対して、教室の後方で正座で授業を受けるよう言い、児童が苦痛を訴えたが、そのままの姿勢を保持させた そのうえで、文科省は、都道府県・政令指定都市の教育委員会を通じて、体罰や不適切な指導で処分された教職員の数を把握している。 しかし、いずれも「実数」ではなく、しかも調査主体や対象、調査方法(相談票・アンケート)、集計方法まで自治体によって異なっているのだ。
●体罰と不適切な指導でも異なってくる
たとえば、東京都教育委員会は、日常的な情報提供と質問票によって、体罰や不適切な指導を把握する。質問票の場合は年に1回実施して、当事者に確認して計上する。東京都の担当者は次のように話す。 「質問票は、児童・生徒と教職員に配ります。児童・生徒や教職員の体験だけでなく、見聞きしたことを含みます。調査は学校が主体です。質問票を回収して、児童・生徒や教職員から事情を聞いたうえで、市区町村の教育委員会に報告します。 都教委には、それらの情報がまとまってあがってきます。体罰だけでなく、暴言や不適切な指導、行き過ぎた指導についても同じです。回収結果を単純集計したものではありません。集計に時間がかかりますが、都教委と市区町村教委との認識は同じです」 千葉県(政令指定都市の千葉市を除く)でも、教職員による体罰やセクハラに関する実態調査をおこなっている。2016年度以降は、セクハラ以外のハラスメントも記述が可能になった。 調査票は記名式で、学校の実情に応じて家庭に持ち帰って記述できる。そのうえで、学校が体罰の事実を確認した件数が報告される。 セクハラの場合は、無記名でも集計しているが、県立高校の教職員からセクハラを受けたと回答した生徒のうち、記名した生徒の割合は61.6%だった(2023年度)。 「県教委が独自に作成したアンケートがあります。統一のフォーマットで、各学校で同じ質問です。体罰やハラスメントは、アンケートの記入があった場合、学校で確認します。暴言やセクハラの場合は数字をそのまま反映させています。学校のフィルターがかかるのは、有形力の行使である体罰の場合です。学校で面談・確認したうえで数字に反映されます」(千葉県) 体罰の認定方法は、東京都と千葉県は同じだが、暴言や不適切な指導に関しては違う。東京都は体罰と同様に、改めて聞き取ったうえで集計しているが、千葉県はアンケートの集計をそのまま反映するかたちだ。