この宇宙で生命は生まれているのか…じつは、生命の材料は「簡単」にできる。それでも、生命の生成を阻む、限りなく「確率ゼロに近い壁」
ほぼ可能性ゼロ…!? 自己複製分子の生成
有機触媒分子の生成など、このように簡単なのです。触媒能が低くてもよければ、原始スープの中では必然的にできます。これが袋にとりこまれれば、「2つ星」のできあがりです。 難題は、自己複製分子をつくることです。 ヌクレオチドをつくるのだけでも大変なうえ、これをつないでオリゴヌクレオチドにするのも大変だし、それらがタンパク質なしで勝手に自己複製できるもの(リボザイム)になる確率となると、私たちが観測可能な宇宙内では、戸谷説のようにほぼゼロとなってしまいます。より簡単にできるとされるタンパク質でも、勝手には自己複製しません。 そして現時点では、核酸(DNA、RNA)以外で自己複製を完璧にやってのけられる分子は見つかっていないのです。
自己複製より自己触媒
そこで、生命は必ず自己複製しないといけないか、というところから疑ってみましょう。岩石などの無機物は長時間安定に存在できますが、有機物は基本的に不安定で、時間がたてば二酸化炭素やメタンなどの単純で安定な分子にまで分解してしまいます。 なのに、有機物でできている生物が地球から消滅してしまわないのは、有機物が壊れるより先に、同じ有機物をつくりだしているからです。地球に約40億年前に最初の生命が誕生して以来、同じ系統の生物が進化しながら生きつづけているのは、生命がこうした自己複製の機能を持っているからです。 ところが、実はもう一つの手があるのです。それが自己触媒です。 ◇ ◇ ◇ 原材料がなくならないかぎりは増えつづけ、しかも、しだいに触媒が増えるために反応速度も増加するという自己触媒。この自己触媒における、前生物的分子生成の可能性を探ってみましょう。 生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか 生命はどこから生命なのか? 非生命と何が違うのか? 生命科学究極のテーマに、アストロバイオロジーの先駆者が迫る!
小林 憲正
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