「金脈」ができる仕組みを解明 研究結果
金は想像以上に一般的な金属だが、その大半は地球のマントル深部に閉じ込められている。一方、地表では火山性や火成岩中に局所的に集中して存在するが、金がどのように地表近くまで運ばれてくるのかは長く議論されてきた。今回、研究チームは数値モデルを用いて、金を含むマグマが濃集される具体的な条件を明らかにした。 活動中の火山の地下50~80キロメートルという深さで、特定の圧力と温度がそろった環境に存在する特殊な硫黄が、マントル内の金をマグマへと移行させる。そして、そのマグマが最終的に地表へと上昇するのだ。 従来の研究では、金は硫黄原子2~3個と分子結合をつくることが知られていた。しかし中国、スイス、オーストラリア、フランスの研究者が参加した本研究では、金-三硫黄複合体(gold-trisulfur complex)の存在とその重要性を示す強固な熱力学モデルが初めて提示された。 純粋な金はマントル中で化学的に安定しており、そのままではマントルにとどまりやすい。だが、硫黄を含む流体が加わると、金は3つの硫黄イオン(イオンとは電荷を帯びた原子または分子)と強く結合して金-三硫黄複合体を形成する。この複合体はマントルの溶融部分、すなわち地質学者がマグマと呼ぶ部分に移動しやすい。 研究チームは、実験室で圧力や温度を制御して人工的にマグマを生成する実験に基づき、この新しい熱力学モデルを開発した。実際の地球内部の条件下でも適用可能なモデルである。 特に重要なのは沈み込み帯(Subduction Zone)だ。沈み込み帯とは、プレートが別のプレートの下に潜り込む領域を指す。このプレート同士の境界部ではマントルからマグマが上昇する可能性があり、沈み込むプレートは深部で溶融しながらマントルへと沈んでいく際に、金を含むマグマの形成に必要な硫黄を豊富に含んだ流体を供給する。 この研究の共著者であるミシガン大学地球環境科学科のアダム・サイモン教授は、「ニュージーランドからインドネシア、フィリピン、日本、ロシア、アラスカ、アメリカ西部、カナダそしてチリに至るまで、太平洋沿岸の大陸には多くの活火山があります。これらの活火山はすべて沈み込み帯環境上に形成されており、火山噴火を引き起こすのと同じプロセスが金鉱床を形成しているのです」と説明する。 「今回の成果によって、沈み込み帯が豊かな金鉱床をもたらす仕組みについて、より確かな理解が得られました。本研究の結果を既存の知見と組み合わせることで、金鉱床の形成過程に関する理解が一段と深まり、探鉱にも好影響をもたらすでしょう」とサイモン教授は結論付けている。 本研究「Mantle oxidation by sulfur drives the formation of giant gold deposits in subduction zones」は米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されており、詳細は該当のリンク先で確認できる。 追加の資料およびインタビューはミシガン大学より提供された。
David Bressan