ヘビはモチを詰まらせないのか?ヘビが丸のみできる理由を、進化生物学者に聞いてみた
2025年の干支は巳(へび)。 かの名作「星の王子さま」では、冒頭に「ゾウをのみ込むほど大きなヘビ」が登場する。 【全画像】お腹がパンパンのヘビ、丸のみの秘密を握るヘビの身体の仕組みを見る そう、ヘビと言えば「丸のみ」だ。 ときに自分の身体よりも大きな獲物を果敢に丸のみにして、お腹をパンパンに膨らませるお茶目な一面が話題になることもあるヘビ。 ヘビはなぜ、大きな獲物を丸のみしても喉を詰まらせないのか。この時期に日本人にとってはおなじみの「モチ」を食べても、ヘビは喉を詰まらせないのだろうか。 そんな素朴な疑問を、ヘビの生態や進化に詳しい日本大学生物資源科学部の竹内寛彦准教授にぶつけてみた。
ヘビは自分よりも大きな獲物を狙う
「ヘビは手足がないため、獲物を手足で押さえつけたり、引き裂いたりすることはできず、丸のみするしかありません」(竹内准教授) ヘビが獲物を丸のみできる理由は、主に3つある。 第一に、大きく口が開くように進化した「頭骨」。そして細長い胴体に獲物を通過させるための「骨と臓器」の形状と、窒息を避けるための「気管」の仕組みだ。 竹内准教授は 「ヘビが捕食する獲物はさまざまですが、基本的には自分の体に対して大きな獲物を狙った方が効率は良いため、ヘビはより大きな獲物をのみ込むことができるように進化してきました。大きく口が開く機能を備えた頭骨は、その代表格です」 と話す。 ヘビはトカゲと同じ爬虫類。中でも有鱗目という同じグループに属する近しい仲間だ。ただ、頭骨に着目すると、その構造はかなり異なる。 上図の水色の矢印で示しているように、ヘビの下顎の先端(口先側)は途中で分断されており、左右の下顎の骨はそれぞれ独立している。一方、トカゲの下顎の骨は、ヒトと同様に顎の先でつながっている。この違いによって、ヘビは大きな獲物を歯でくわえた際に、左右の下顎の骨を開いたり、交互に動かしたりすることで、獲物を喉の奥へ送り込むことができるのだという。 またヘビは、頭の側面にある骨と下顎の骨をつなぐ「方形骨」が進化の過程で長くなった(上図黄色矢印)。こうして顎の可動域が広がり、口をグワっと大きく開けることができるようになったのだという。 「トカゲに比べると非常にきゃしゃな頭骨で、固い骨で頭を守ることを犠牲にしてまで、ヘビは大きな獲物を捕食する方向に進化したとも言えます」(竹内准教授)