人を食う大蛇、悲惨な捕食事例はどのようにして起こるのか
ヘビに人間が(獲物として)狙われるリスクは、ほぼなきに等しい。ニシキヘビやアナコンダといった最大級のヘビでさえ、主食は齧歯類や鳥、小型・中型の哺乳類だ。しかし、特定の状況下では、ヘビが人間を捕食することがある。通常の獲物と間違えた場合や、獲物が乏しい異例の状況に陥った場合だ。 人間を捕食したことが確認されている2種のヘビの実例を紹介しよう。こうした事例はごくまれで、ヘビの自然生息地に人間が侵入した結果であることが多い。それでも、これらの捕食者の恐ろしさを改めて思い知らされる事実であることに変わりはない。 ■1. アミメニシキヘビ(Malayopython reticulatus) 人食いヘビの記録のなかでもずば抜けて悪名高く、詳細な記録が残っているのが、今年6月にインドネシアの南スラウェシ州カレンパンで起こった事例だ。全長4.9mのアミメニシキヘビの体内から、女性1人の遺体が発見された。犠牲者は4人の子どもの母親で、捜索届が出ていた。遺体はヘビの腹を切り開いて取り出され、埋葬された。 インドネシアでは近年、ニシキヘビが人間を捕食する事故が相次いでいる。昨年には南東スラウェシ州ティナンゲアで全長8mのヘビを村人たちが駆除したが、このヘビは集落内で農家の男性1人を絞め殺して捕食していた。 アミメニシキヘビは世界最長を誇るヘビで、全長9mを超える記録が複数ある。東南アジアに分布し、熱帯雨林、草原、マングローブの湿地帯に生息する。人々が暮らす集落付近でもしばしば見つかり、住民と接触することも少なくない。 美しい模様の入った鱗と、恐るべき締めつけ力をもつアミメニシキヘビは、主に鳥類、小型哺乳類、他の爬虫類を捕食する。しかし上記の通り、ぞっとするような事例は実際に起こっており、この大蛇との遭遇がますます不可避となりつつある地域におけるリスクを物語っている。 アミメニシキヘビの捕食行動に関する研究によれば、このヘビは自重の半分もの体重がある獲物をのみ込める。2005年6月に学術誌The Raffles Bulletin of Zoologyに掲載された論文では、アミメニシキヘビがマレーグマを襲って食べた事例が報告されており、大型の獲物を捕食する能力があることを裏づけている。 柔軟な顎と、消化管が(獲物に合わせて)拡張する能力のおかげで、アミメニシキヘビは大型動物を捕食でき、時に人間をものみ込んでしまう。