人を食う大蛇、悲惨な捕食事例はどのようにして起こるのか
2. アフリカニシキヘビ
■2. アフリカニシキヘビ(Python sebaeおよびPython natalensis) 2002年、南アフリカのダーバンで10歳の少年がアフリカニシキヘビに殺され、のみ込まれたというニュースが世界を駆けめぐった。このヘビの「人食い」事例が報告されたのはこれが初めてだった。 犠牲者と一緒にいた子どもたちは、マンゴーの木に隠れながら、身の毛もよだつ光景を目撃した。ヘビは少年を捕らえ、締めつけて命を奪い、丸ごとのみ込んだ。 爬虫類学者によれば、このニシキヘビは冬眠から覚めたばかりで獲物を探しており、そこへたまたま運悪く犠牲者が居合わせてしまったのではないかという。 もう一つの悲惨な事例は、カナダ・ニューブランズウィック州キャンベルトンで起こった。2013年、4歳と6歳の幼い兄弟がアパートの部屋で眠っているあいだに、階下で父親が経営するペットショップから脱走したアフリカニシキヘビに殺されたのだ。 アフリカニシキヘビは、サハラ以南のアフリカに分布する。2009年の米地質調査所(USGS)の報告書によると、全長は6mを超え、上下の顎は伸縮性のある腱でつながっていて、自分よりも体格のよい動物をのみ込める。野生では、レイヨウやワニといった大型動物も捕食した記録がある。 東南アジアのアミメニシキヘビと同様に、アフリカニシキヘビも獲物を締めつけて窒息させて殺し、その後のみ込む。同じように締めつけ捕食を行う大型のヘビ全般に言えることだが、いちど獲物を捕らえると、どんな種類の動物でもこだわらないため、まれにだが人間が捕食される事態が起こると考えられている。 ■ヘビのせいばかりではない 人食いヘビの騒動はメディアで誇張されて報道されがちだが、締めつけ捕食を行う大蛇、特にアミメニシキヘビとアフリカニシキヘビに関しては、実際に人間を捕食したという確かな報告がある。 こうしたまれな事例は、これらのパワフルなヘビの場当たり的な捕食行動の特徴だけでなく、人間活動の拡大や、ヘビたちの生息地の消失が組み合わさった結果として起こっている。ほぼすべての事例において、大蛇は積極的に人間を(餌として)探していたわけではない。生息域と人間の活動領域の近さや、周囲の状況により、たまたま人間と遭遇してしまったのだ。
Scott Travers