生成AI、次の舞台は「軍事」のワケ、激アツ市場に猛烈アタック「OpenAIの切実事情」
生成AI事業で独走するOpenAIだが、生成AIの安定した新たな収益源として、政府契約の獲得に注力している。防衛用途として米陸軍に猛烈な売り込みを図っており、2024年初めには製品使用ポリシーから「軍事および戦争への使用」を禁止する文言を削除したという。こうした中で、ライバルである生成AIスタートアップ、xAIを率いるイーロン・マスク氏が、2025年1月に発足する第2次トランプ政権への入閣が決まった。マスク氏も連邦政府の大型AI契約を取りに行くと見られるが、両社は今後どんな展開を見せていくのか、解説する。 【詳細な図や写真】図1:デスクトップおよびモバイルデバイスで、世界で最も訪問数の多かったWebサイトのランキング(2024年9月の数値)(Similarwebより編集部作成)
1,000億ドル企業めざす「OpenAIの現在地」
まずはOpenAIが現在置かれている状況を競合と比較しながら簡単に見てみよう。この状況を理解することなしに、トランプ次期政権下でOpenAIがどのように政府契約を取りに行くのか、またいかに競合のxAIに対抗してゆくかを予想することはできない。 米調査企業Similarwebがまとめた世界で最も訪問数(セッション数)の多いWebサイトの比較(図1)を見ると、Googleが820億回と群を抜く1位であり、YouTubeが280億回で2位、フェイスブックが123億回で3位だった。一方、OpenAIのChatGPTは31億回と日本のヤフーの32億回よりも下位である。 とはいえ、生成AI検索分野に限ると、9月のChatGPTの月間訪問数は前年同月から112%増加して31億回となった。前身のChat.OpenAI時代に長らく越えられなかった20億回の壁を突破し、スランプから脱して急成長していることがわかる(図2)。 米国内に限れば、月間アクティブユーザー数が9月に1000万人を突破(図3)。11月時点でOpenAIに累計140億ドル(約2.1兆円)を出資しているマイクロソフトのBingを追い抜く寸前にまで来ている。 今年のChatGPTによる収益は、2023年の7億ドル(約1,078億円)から27億ドル(約4,162億円)に大幅に増加する見込み。これに加えOpenAIは、その他の収益源から10億ドル(約1,541億円)を得る見通しだ。同社は2029年までに年間収益を1,000億ドル(約15.4兆円)にまで増やすことを目指しており、生成AI分野で独走態勢に入っている。 一方、ライバルの逆転を許さないために大規模言語モデル(LLM)開発とクラウド利用にかかる費用は尋常ではない。そうした状況もあり、OpenAIは10月に、新たに66億ドル(約1兆円)の新規投資を受けたばかりだ。だがその投資には興味深い条件が付けられている。