ディズニーで「走る」イベントが話題!世界一ハマるランニングイベント米国「runDisney」の魅力
runDisneyにしかない魅力
1994年に始まったrunDisneyは、毎シーズン17万人ものランナーが参加する世界最大のランニングイベントの1つ。runDisneyはバーチャルレースも行っている(参加者は指定された時間枠で近所を走り、自己申告のタイムをアップロードして、レースのゼッケン・電子証明書・重たいメダルを郵送で受け取る)けれど、参加費はレースの種類によって100~405ドル(約1万5000円~6万円)と非常に高額(ボストンマラソンでさえ約230ドル)。にも関わらず、参加枠は数分で完売するからすごい。runDisneyの熱心なリピーターは、交通費、宿泊費、参加費に年間数千ドルを支払っている。 毎年約1万ドル(約156万円)を費やして平均3回はrunDisneyに参加するジェイミー・マルセラ(42歳)によると、ディズニーのレースは一般的なレースと全然違う。ディズニーに関する物理的な要素が人を惹き付けるのは間違いない。でも、他のレースと違ってrunDisneyは、人を懐かしい気分にさせる。このイベントに参加するランナーは子どもの頃からディズニーの映画やキャラクターを通してパークの風景とつながっていて、いまも配偶者や友人と一緒に、あるいは自分の子どもを通してディズニーの魔法にかかっているのだ。 runDisneyのランナーは、日の出と共にシンデレラ城を走り抜けるという、このレースでしか不可能な体験をする。ジェイミーいわく、その景色は「この世で一番美しい」そう。 「あれを見たら泣かずにはいられません。ティッシュを配る人がいるくらい素晴らしい体験です」 これは決して誇張じゃない。この話をするだけで息が詰まると言うジェイミーいわく、その瞬間に泣く人があまりにも多いため、シンデレラ城のあちこちにティッシュ箱を持ったキャストが立っていて、ジェイミー自身も毎回わんわん泣いているそう。
runDisneyは居場所をくれる
この世には大勢のランナーがいて、その中にディズニーのランナーがいる。各地方のレースに出場するランナーは友情とチームワークで結ばれているけれど、runDisneyのランナーの結束感はレベルが違う。そもそも、このレースはライブエンターテイメント。この場限りの特別なキャラクターグリーティングが開催されて、ディズニーの専門用語が飛び交い、みんなが手の込んだ衣装を用意し、フェイスブックのグループで世界中の友達と何カ月も前から計画するので、熱い絆がすぐに生まれる。 「runDisneyに申し込むと、準備段階で必ずランナーの友達ができるものです」とジェイミー。 このイベントの参加者は単にランニングが好きなだけでなく、ディズニーを心から愛している。「みんな同じ映画を観てきているので話が合います」と語るのは、英国を拠点とするスポーツ心理学者で、スポーツパフォーマンスに関する本を複数出版しているジョセフィン・ペリー博士。ランナーは昔から結束の強い集団を形成してきた。そしてディズニーは、その結束を一段と強くする。「ランニングは人と人を実に上手くつなげてくれますが、それはディズニーも同じでしょう」。だから、この2つを一緒にすると、「とてもパワフルで大きな原動力になる」というわけ。 ペリー博士によると、このつながりは多くのランナーがrunDisneyに繰り返し帰ってくる心理的な原動力になっている。 そして、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにあるESPNワイド・ワールド・オブ・スポーツ・コンプレックス(ウォーターパークやミニゴルフコースを併設するスポーツ複合施設)のバイスプレジデントを務めるアダム・ボールいわくrunDisneyは「熱心なファンの驚くべき情熱を糧に成長している」。 ランナー歴10年で、つい先日100回目のrunDisneyを完走したブルック・プレロフスキー(36歳)も「runDisneyの真の魅力は大勢の情熱が混ざり合っていることです。とても気が合う素晴らしい仲間たちに出会えます」と話す。 米デンバー大学スポーツ・パフォーマンス心理学部の共同ディレクターで教授のジェイミー・シャピロ博士によると、このイベントのリピーターの多さには脳内化学物質も関係している。運動には私たちの気分を良くして、ストレスと不安を軽減する作用がある。そこにディズニーワールドにいることで大量に分泌されるドーパミンやセロトニンが加われば、パソコンまで走って行って次のレースに申し込まずにいられなくなるというわけだ。「この2つのポジティブな心理的作用が組み合わると、喜びが倍増します」とシャピロ博士。 ディズニーのランナーたちは、自分の功績を表すための専門用語まで生み出している。例えば、“Going Dopey(ゴーイング・ドーピー)”は週末に4つのレースを全て完走すること(4日間で合計約78.2km)、“Going Goofy(ゴーイング・グーフィー)”はハーフマラソンとフルマラソンの両方に参加することを意味する言葉。