能登半島地震から1年 「記念日反応」とどう向き合う?…症状は「気分が落ち込む」「眠れない」「映像を見るとつらい」
家族との時間を大切に
――この時期は、どのように過ごせばよいでしょうか。 今は、天気にたとえると、嵐が近づいてきているような状況です。「その日」にどう行動するか、あらかじめ決めておくとよいでしょう。心を揺さぶられるような行動は避けて、なるべく穏やかに心が落ち着くような行動を取ることが大切です。 心が落ち着く方法は人それぞれです。家族や友人と一緒に過ごしたい人もいるでしょう。犠牲になった方々を追悼する式典などがあれば、思いを寄せて、同じような不安や悲しみをもった人たちと、その気持ちを分かち合うことができます。自分がやりたいと思っていることがある人は、それに没頭するというのでもよいと思います。 夜、眠れないという場合は、昼過ぎ以降は、お茶やコーヒーといったカフェインを含む飲み物を避けたり、布団に入ってからスマートフォンを手にすることをやめたりすることも大切です。 当時の映像を見ると、「怖くなる」という人もいると思います。特にSNSを見ていると、同じような映像が繰り返し流れてきます。メディアとは、心が傷付かないよう距離を保つ必要があります。 ――能登半島地震では、帰省していて被災したという人もいます。 この正月もできれば帰省して、家族とともに過ごす時間を大切にしてほしいですが、ためらってしまうという方もいると思います。無理をしないという選択肢もあるでしょう。その場合も、テレビ電話などを利用して、家族とコミュニケーションをとり、気持ちを分かち合うようにしていただければと思います。 ――1月1日が過ぎても、心身がすぐれない場合はどうしたらよいでしょうか。 記念日反応は、「その日」が過ぎれば、治まります。ただ、何日もつらい気持ちが続くようであれば、例えば、カウンセラーに気持ちをはき出してみてはいかがでしょうか。2週間ほどたっても心身の調子が戻らなければ、まずは、かかりつけの医師に相談していただき、必要に応じて、精神科医などの専門医を受診してみることをお勧めします。
しげむら・じゅん
目白大学保健医療学部教授、米軍保健科学大学精神科連携教授、精神科医師。1994年 慶応大学医学部卒。防衛医科大学校准教授を経て2020年より現職。専門は災害精神医学。福島第一原発事故での支援活動について、福島県知事から「被災者支援活動に対する感謝状」を受賞した。23年から日本トラウマティック・ストレス学会長。著書に「災害精神医学ハンドブック」(22年、監訳、誠信書房)など。