行方不明になった編集者。全ての謎は「ある場所」へと繋がっていた。寒い冬に極上の恐怖を! 身も心もひんやりホラー漫画4選【書評】
三島屋変調百物語
1999年の『理由』で直木賞を受賞した推理小説のリビングレジェンド・宮部みゆき氏。彼女が2008年より刊行している『三島屋変調百物語』が、『拝み屋横丁顛末記』などで知られる漫画家・宮本福助氏によってコミカライズされている。
『三島屋変調百物語』は、江戸時代を舞台に怪異の恐怖と人間ドラマを織り交ぜた物語が展開される怪談集。とあるトラウマによって心を閉ざした17歳の少女・おちかは、人との関わりを避けるために仏門を叩こうとしたが、紆余曲折あって叔父が経営する袋物屋「三島屋」へ身を寄せることになった。 「三島屋」で、お客から不思議な怪談を聞く役目を任されたおちか。語り部の口から出るのは自戒に満ちたエピソードばかりで、それを聞かされるうちに彼女の凍りきった心が溶かされていく――。 怪奇譚ということで、摩訶不思議な物語が展開されていく同作。その本質は怪談話の背景にある人間ドラマとミステリーだといえる。宮部氏らしい繊細な心理描写が存分に発揮されている『三島屋変調百物語』を読めば、人間の闇に心を癒される不思議な体験ができるかもしれない。
不安の種* アスタリスク
『PS-羅生門-』や『書かずの753』などで知られる中山昌亮氏のホラー漫画『不安の種』。オムニバス形式で繰り広げられる“不安”をテーマにした怪奇譚で、2013年には実写映画化も果たしている。
2002年から2005年にかけて連載されたのちに、2007年から2008年にかけて『不安の種+』と改題されて復活。2019年に蘇ったのが、シリーズ新作『不安の種* アスタリスク』である。 同作では、日常に潜む不安や謎をキッカケに、さまざまな怪異現象が巻き起こっていく。誰もが感じたことのある、ふとした感情がベースになっているせいか、否が応でも身近に感じてしまい、さらに怪異の正体が最後まで明かされないという不気味さ……。よりリアルなホラーを楽しみたいという人にオススメだ。 さまざまな仕掛けで人間の感情を揺さぶってくるホラー漫画。年末年始の時間を使って、じわじわと迫る恐怖を味わい尽くしてみてはいかがだろうか? 文=ハララ書房