複雑すぎる「障害年金」の初歩がこれでよくわかる! 病気・障害で困っていれば若くても「年金」がもらえるかも…
障害年金は、病気・障害で困っていれば20代や30代の人でも受給できる可能性がある。まさに国民の強い味方といえよう。思わぬ事故や突然の病気で生活に行き詰まる可能性は誰にでもある。いざというとき制度の存在だけでも思い出せるよう、障害年金の初歩を、新刊『発達障害・精神疾患がある子とその家族が もらえるお金・減らせる支出』より抜粋してお贈りしたい。 画像】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待「すべてが壊れた日」 前編〈喫茶店でコーヒーを飲む金もないのに…精神疾患のある人が頑固に「支援」を拒否していた意外な理由〉より続く。
現役世代でも、障害を抱えていればもらえる
年金はお年寄りだけがもらうもの、と思っている人がいるかもしれませんが、実は公的年金制度で年金の支給対象になるのは、高齢者だけではありません。 たとえば、家計を支えてくれていた大黒柱を失ってしまった人は、「遺族年金」の対象となることがあります。そして病気やケガなどで障害を負ってしまい、日常生活や仕事が制限を受けるようになった人を対象とするのが、この記事のテーマである「障害年金」です。 我が国では、20歳以上60歳未満の人は原則として誰もが公的年金制度に加入する「国民皆年金制度」がとられています。加入できる年金はその人の立場により異なりますが、全体としては、共通のベースである国民年金(基礎年金)に厚生年金保険が上乗せされるかたちなので、よく「二階建て」の構造をしていると言われます。 (以上のほか任意加入の私的年金を合わせて「三階建て」と表現する場合もありますが、直接は本記事のテーマに関係しないので省略します)
障害年金は、障害の重さにより5つにわけられる
障害年金も、他の年金と同様、基礎年金(障害基礎年金)と厚生年金(障害厚生年金)の「二階建て」です。受給者数は増加傾向にあり、2022年度末の時点では236万人が受給しています。(障害基礎年金は210万人、そのうち障害厚生年金保険もあわせて受け取っているのは32万人)。
受給できた場合、いくらもらえるのか?
障害基礎年金は障害の重さ(障害等級)に応じて受け取れる年額が決まります。受給している人に子どもがいる場合は、そのぶん加算がつきます。これは「子の加算」と呼ばれます。 障害厚生年金は、障害の重さとともに、賃金や年金制度への加入期間の長さに応じて額が決まります。加入期間が300月に満たない場合は加入期間を300月とみなして計算されます。また、受給している人に配偶者がいる場合は増額されます。こちらは「配偶者の加給年金」と呼ばれます。 なお、障害厚生年金には障害が3級より軽い人を対象とする「障害手当金」があり、要件や手続きはほぼ同じなのですが、精神疾患・発達障害で該当することは、ほぼありません。 障害年金に所得制限はありません。ただし、20歳前に初診日があり、年金の保険料を納付していなくても障害基礎年金が受給できる人には所得制限がつき、前年度の所得が472万1000円を超える場合は全額が支給停止に、370万4000円を超える場合は半分が停止となります(受給者に扶養家族がいる場合は上限が緩和されます)。 なお、年金受給者の生活を支える目的で、2019年「年金生活者支援給付金制度」が施行されました。障害基礎年金の受給者で、前年の所得が一定以下などの要件にあてはまる人がもらえます(障害等級1級なら月6638円、2級なら5310円。障害厚生年金1・2級受給者は必然的に障害基礎年金1・2級を受給しているので基本的に対象となります)。 以上が障害年金の概要です。次回の記事ではもう少し立ち入って、受給の要件についてご紹介します。 次の記事〈【精神保健福祉の専門家が警鐘】誰もが精神疾患になり得る! この時代に忘れてはいけない「たった1つの手続き」〉を読む。
青木 聖久(日本福祉大学教授、精神保健福祉士)