高齢化・老朽化団地の理事長に就任するや鳴りやまない電話! 突然の断水トラブルで住人の団結力が試される【ポンコツ理事長奮闘記3】
プロ住人の登場。「俺はポンプのプロや!」
ここへ来て、腕に覚えのあるベテランたちが動き出しました。 周りから「御大(おんたい)」と呼ばれているおじいさんがいます。このおじいさん=Yさんは私の実家のお隣の住人で、3年前の理事長でもありました。 Yさん「今日、何かあったか?」 私「ええ~っと……午前中に受水槽の清掃があって……」 的を射ない説明でも、現場が分かる人には響いたよう。 Yさん「定位置は……このスイッチとあのダイヤルが合ってないな……さては……」と何やらブツブツ言いながら、ダイヤルに手をかけます。すると、 「どうして勝手に触るんですか!!! 壊れたらどうするんですか!!!」と叫ぶ人が。 はっとして振り向くと、仕事帰りの若手住人が必死の形相をしています。彼が心配するのも無理はありません。私たちの団地では、自治体の水道部から送られてくる水をいったんポンプ室にある2つの受水槽で受けてから、電気とポンプの力で各戸へ水を届けています。このポンプがダメになれば、団地120戸全ての水が数日にわたって使用不能になってしまうからです。
「俺はポンプのプロや!」 Yさんも言われっぱなしではありません。堂々と制した言葉どおり、止まっていたポンプが再び動き出し、30分ほどで水が再び出るようになったのです。 最初こそ怒りに身を震わせていたインテリ住人でしたが、次第にプロ住人に対する敬意が芽生えたよう。最後は素直に頭を下げました。 「さっきは大きな声を出してスミマセンでした!」 するとポンプのプロは小さな声で「うん、まぁ、気持ちは分かる」と矛を収め、照れくさそうにきびすを返しました。「業者はいらん。業者は帰れ」とブツブツ言いながら。 あぁ、団地のコミュニティは健在です。 「自分が暮らす団地だから、と管理会社や理事会任せにすることなく、能動的に支えてくださる人もいるんだ……」。私はなんだか感激してしまいました。 その後、23時ごろから業者が点検開始。 すべてのチェックが完了して、団地に静けさが戻ったのは日付が変わるころでした。 ポンプ室から来た道を戻ります。この日、大活躍だったFさんがこれから1年の道筋を照らしてくれました。 「本来は副理事長とフロントマンがしっかり連携するべきやったけど、まぁええやろ。 もう総会は終わってるからな。今日のことは俺らの代の仕事や。 6月は排水管の洗浄工事、 7月は植栽の剪定、 8月は止水バルブの交換、 後半になったら団地の将来のことも検討しないと。 今年は始めから赤字予算でおかしなことになってる。 去年は補修員会の立ち上げにも失敗してるしな」 青白かったFさんの頬に赤みが差して、気力を取り戻しつつあるように見えます。 “住人の底力”を目の当たりにした私は、 「団地の建物は老朽化してるけど、うちの住人たちは捨てたもんじゃないな~♪」 と心を強くしたのでした。
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