受験生なら絶対にインフルワクチンを接種すべき…小児科医が親に「年内に2回注射」を推奨するワケ
受験生が入試本番で実力を発揮するために、親はどうサポートすべきか。小児科医の高橋謙造さんは「私自身の経験も踏まえて、皮下接種のインフルエンザワクチンを2回接種することをお勧めする。確率は低いが、発熱などの副反応で2、3日潰れてしまうこともあり得るので、接種のタイミングはできる限り早めが良いだろう」という――。 【この記事の画像を見る】 ■受験生の親に伝えることは決まっている 「先生、ウチの子、今年受験なんですけど、インフルワクチン(以下、Flu Vaccine:FVacと略します)は受けたほうがいいでしょうか?」といった質問が、外来で飛び交うシーズンになってきました。 私の回答は一貫しています。「受験のような重要なイベントがあるなら、できれば2回接種しておきましょう。皮下注射ワクチンでも、経鼻ワクチン(フルミスト)でもある程度の予防効果が期待できます」です。 ただし、皮下注射、経鼻のどちらを選ぶかは、保護者さんのご判断にお任せするしかないというのが本当のところです。ワクチンの選択も含め、FVacの効果等について、小児に焦点を絞ってお話しします。 ■そもそも、ワクチンは本当に効くのか? FVacを接種していても、インフルエンザに感染してしまうことはよくあります。世界のさまざまな研究においても、ワクチンの感染予防効果は決して高いものばかりではありません。これは、インフルエンザ株が変異しやすいためであり、変異したウイルスにはワクチンの予防効果が十分ではないためです。 世界的に見ると、WHO(世界保健機関)がその年の流行の予測を出し、世界各国ではこの予測を参考にしてワクチンを作成します。さらに、日本においては、国立感染症研究所がインフルエンザワクチン株選定のための検討会議を毎年開催して、その年度に流行しそうなインフルエンザ株を予測・指定し、この指定に基づいて皮下注射用ワクチンが作成されます。そのため、どの施設で接種しても、接種の中身は全く同じです。 ワクチンの感染予防効果に関しては、さまざまな報告がありますが、学齢期の児童を対象とした調査は多くはありません。厚生労働省の報告によると、概ね20~60%の発病防止効果があったと報告されていますが、これも含めて決して感染を完全に予防できるわけではないようです。 むしろ、世界での関心事項はインフルエンザ感染による重症化予防に対するワクチンの効果にあります。最も質が高いと言われるシステマティックレビューとメタ解析の小児を対象とした報告によると、入院の予防効果は完全接種児(2回の接種スケジュールを完遂した児)においては60%以上、単回接種の児においては30数%とのことです。確実に2回接種したほうがよさそうです。