「思わず鳥肌が立った」高橋メアリージュンが感じた”暴力で変えられないもの”
10年ぶりに舞台に立ちます
1月9日より、劇団プープージュース第30回記念公演『革命の家』の主演をします。不条理に対する暴力を肯定するグループによる暴力の連鎖をテーマに、現代の革命を描いた社会派の舞台になります。 私が初めて劇団プープージュースさんの舞台に立ったのは11年前。翌年にはヒロインをやらせていただき、今回が10年ぶり3度目の舞台経験となります。 本作については、まず企画書の熱量に打たれました。「たとえ戦争で世の中が黒く染まってしまったとしても、芸術や人の思い出までは染められない」「人としての尊厳は決して汚せない」というような、心揺さぶられる言葉が並んでいて、鳥肌が立ったことを覚えています。 私が演じるのは、両親や兄弟を殺された過去を持つテロリスト・琴月アキラ。家族を失い、自分も死んでしまいたいと思っていた時に、加害者を次々に制裁していく被害者遺族の集団<革命の家>に出会い、仲間に加わったという経緯があります。暴力に暴力で対抗することへの葛藤を抱えながら、復讐の道を進んでいく攻撃的な女性です。
「不条理の前に沈黙しない」という思想
<革命の家>の創設者は黒木という女性で、彼女は息子を殺された過去を持っています。裁判所で犯人と対峙した際、殺人の動機を「人を刺してみたかったから」と言われるのですが、彼女は銃でその犯人を撃つんですね。 黒木は「暴力の前で加害者の権利は守られているのに、なぜ被害者は沈黙しないといけないのか。不条理ではないか。暴力には暴力で対抗します。これは復讐ではなく思想です。私はここに<革命の家>の設立を宣言します」と声明を出します。 法は完璧ではないという思いをベースにした、「不条理の前に沈黙しない」という思想ですね。 現実にも、ただ「人を刺してみたかった」「殺してみたかった」という動機で人を殺める人もいれば、ひどい罪を犯したにも関わらず、たいした罪に問われない人もいます。私もそうですが、ニュースを見て、これでは被害者が浮かばれないと感じたことがある人は多いのではないでしょうか。 そういう意味では、過去に私が出演したドラマ『アバランチ』『新空港占拠』にも通ずるところがある作品だと思います。 ◇後編「「かわいそうに」は崖の上からの言葉。高橋メアリージュンが殺害事件の遺族に思うこと」では、「鳥肌が立った」という舞台のテーマから、殺害事件のご遺族の気持ちを想像して感じたことを伝えていきます。 「革命の家」 ドキュメンタリー監督である佐久間優は、世の中に突然現れ、暴⼒的な事件を数々起こしている集団<⾰命の家>に取材を申し込み、許可される。彼らは被害者遺族の集まりであり、事件を起こした加害者を次々に制裁していく。 ⽬の前で起きる圧倒的な暴⼒を体験し、暴⼒の連鎖の凄まじさを⽬撃する中で、佐久間は琴⽉アキラというテロリストに出会う。アキラは⾃分の両親を殺害された過去を持ち、最も攻撃的な性格を持つメンバーだった。佐久間は次第に彼⼥が⼼の中で抱えている葛藤に気づき、彼⼥をドキュメンタリー映画の主役として撮影ようと決意する。⽇本中に広がっていく狂気。⽌めることのできない復讐の連鎖の中で、最後に佐久間のカメラが映したものは……。 取材・文/上田恵子
高橋 メアリージュン(俳優)