銀メダル鍵山と銅メダル宇野は4年後のミラノ/コルティナ・ダンペッツォ五輪で“打倒”ネイサン・チェンを果たすことができるのか?
4種類5本の4回転ジャンプをすべて成功させた。4回転フリップ+3回転トゥループの難度の高い連続ジャンプからはじまり、4回転アクセルの次に難しい4回転ルッツも余裕をもって降りた。得点が1.1倍となる後半に予定していた4回転トゥループ+1回転オイラー+3回転フリップの3回転フリップが1回転となり、足替えコンビネーションスピンで、回転不足があり「レベル2」となる小さなとりこぼしが響き、自己ベストには届かなったが、218.63をマーク。演技後には、スタンドからは、スタンディングオベーションが起きた。 海外メディアは一斉にネイサンの金メダルを称えた。米CNNは「ネイサンが他の選手を優に上回る完璧な演技で初の五輪金メダルを北京で勝ち取った。『クワッドキング』とのニックネームにふさわしい優れた技術を披露し、積み上げたフリースケートで彼の勝利を手繰り寄せた」と伝え、USAトゥデイ紙は「ネイサンがプレッシャーの中で素晴らしい偉業を達成した。彼が、この3年間、勝利してきたすべての主要国際大会で、もっとも長く人々の心を捉え、もっとも記憶に残る4分間だった。彼が受け止めてきた不快な2018年平昌五輪のSPの過去を忘れさせ、安堵がもたらされた」と絶賛した。 22歳のネイサンは4年後のイタリア、ミラノ/コルティナ・ダンペッツォ五輪では油の乗り切った年齢で羽生の連覇の記録に挑むことになる。 ただ、休学中の名門イエール大学に8月には復学し、データ科学を学ぶ予定で、その先には、医師の道へ進む考えもあり、今後の進退については、「今後のことは分からない。学校にも戻りたいし、スケートに関することは、もう少し考えたい」と明言を避けた。ネイサンがいなくなれば、金メダルを鍵山と宇野が争うことになる。だが、CNNによると彼は「スポーツと他への探求のバランスが成功により結び付いている」という考えを持っており、ネイサンが2026年のミラノ/コルティナ・ダンペッツォ五輪参戦を決断すれば、大きな壁として、再び鍵山、宇野の前に立ちはだかることになる。 4年後、日本勢はネイサンを倒すことができるのか。昨春から千葉の「三井不動産アイスパーク船橋」に設立されたMFフィギュアスケートアカデミーのヘッドコーチに就任した中庭健介氏は、こんな見解を持つ。 「両選手に可能性はあると思います。4年後にちょうど今回のチェン選手と同じ年齢になる鍵山選手は、今回、ミスを最小限に留める18歳とは思えない危機管理能力まで見せる素晴らしい演技をしました。ミスがなければ、今日の演技だけでもノビシロは約9点あります。ジャンプの質が高く、今後、伸ばすことのできる演技構成点でもチェン選手に3.28点差まで迫っています。またどんな状況であろうが5本の4回転の難度の高いプログラムをやりきり、ここを通過点にしてしまう向上心の高い宇野選手が、完成度を高めることへの期待もあります」 “打倒ネイサン”の一番手は鍵山だろう。