羽生結弦の4回転アクセル世界初認定と4位入賞の価値とは…「切り拓いたフィギュア界の未来」
北京五輪のフィギュアスケート男子シングルフリースケーティング(FS)が10日、北京の首都体育館で行われ、ショートプラグラム(SP)で8位と出遅れた羽生結弦(27、ANA)が4回転アクセルに挑戦、転倒はしたが、回転不足の判定で ISUの公認大会で初めての認定を受けた。続く4回転サルコーに転倒したもののFSでは全体3位となる演技で188・06点をマークし計283・21点で4位となった。世界初認定となった4回転アクセルへの挑戦と4位の価値とは?「フィギュア界の未来を切り拓いた」との専門家の声がある。
「全部出しきった」
羽生は涙をこらえた。悔しがるでもない。一瞬だけ、ふっと笑っているようにも見えた。94年ぶりとなる3連覇に挑んだ羽生は、フィニッシュの瞬間、天井を見つめたまま、数秒間、動かなかった。リンクを出る瞬間、深々と頭を下げて銀盤にそっと手を置き、氷をつかんで、おでこに当てた。「ありがとう」の思いを込めてーー。 「正直、なんですかね、全部出しきったのが正直な気持ちです」 結果はSP8位の出遅れを取り返せずにメダルに届かぬ4位。だが、羽生はフィギュア界の歴史に確かな一歩を刻んだ。 世界で初めて4回転アクセルが認定されたのだ。 「天と地と」の勇壮なシンフォニーに乗って挑んだ冒頭の4回転アクセル。前向きに踏み切った羽生は高く舞い、体を回転させて、片足で着氷しようとしたが、そこで転倒した。だが、ジャッジの判定は回転不足(アンダーローテーション)。昨年12月の全日本選手権での4回転アクセルは2分の1以上の回転不足のダウングレードと判定され、4回転アクセルとは認定されず、3回転アクセルとして扱われ、3回転アクセルの基礎点で評価されていたが、今回は、4分の1以上2分の1未満の回転不足での4回転アクセルとしてISUの公認大会では初の認定を受けたのだ。だが、基礎点はアンダーローテーションの規定に従い12.50から減点され10.00となり、GOEも9人のジャッジ全員最低評価でマイナス5.00となり、結局、4回転アクセルのジャンプの得点は5.00点となった。 「明らかに前の大会よりも、いいアクセルを跳んでいましたし。うん、なんか、もうちょっとだったなって思う気持ちも、もちろんあるんですけど、でも、あれが僕の全てかなって…」 羽生自身は世界初認定となった大技をそう振り返った。