世界中でEVが失速する中、なぜ「東南アジア」では急成長しているのか?
ベトナムで進むEVシフト
しかし、東南アジアではこうした停滞とは無縁の光景が広がっている。 たとえばベトナムでは、ベトナムを代表するコングロマリットであるビングループのVinHomes社が展開する複数のスマートシティにおいて、全面的に電気自動車へと移行するグリーンプロジェクトが推進されている。 VinBusによる電気バス路線の拡大、Green and Smart Mobility(GSM)によるEVタクシーサービスの提供など、ビングループは消費者向けにEVを販売するだけでなく、品質の低い公共交通やタクシーをEVに置き換えることで一気に普及させる戦略を取った。 こうした活動が評価され、ビングループは、デジタルツールと革新的なテクノロジーを活用した持続可能な取り組みを評価する「AIBP 2023 ASEAN Tech for ESG Award」を受賞した。 比較的成熟した事業から、より成長の可能性が高い事業へ資本を再配分するという戦略の一環として、2024年3月には傘化の小売事業の売却も発表しており、今後のEV事業飛躍に向けて資金調達に動いている。 また、2022年時点でのEV登録台数が約1,300台だったラオスでは、政府の支援と国際的なパートナーシップにより、2023年だけで約2,600台のEVが販売された。同年11月には先述のベトナムGMSが首都ビエンチャンでEVタクシーサービスを開始するなど、事業者によるEV導入も進んでいる。
シンガポールのバスの半分がEVに
シンガポールでも同様に、EVの普及が進む。2021年2月に政府が発表したSingapore Green Plan 2030には車両の電動化を強力に推進する計画が含まれており、シンガポール運輸省管下の法定機関であるLand Transport Authority を中心に、その実現に取り組んでいる最中だ。 2030年以降すべての新車登録はクリーンエネルギーモデルに限定されることになっており、それまでに、全土に6万箇所のEV充電ステーションを設置する目標を掲げている。公共の充電設備の所在やリアルタイムの空き状況などを確認できるアプリも開発されるなど、着々と整備が進められている。 また、2020年以降、新たに購入された公共バスはすべてEVもしくはハイブリッド車となっており、2030年までには公共バスの半数がEVになる想定だ。