「レガシィ」消滅で改めて問う SUVは日本の交通事情に合っているのか? 日の丸SWは“オワコン”か
90年代ワゴンブームの火付け役が間もなく販売終了
スバルは2024年10月24日に、クロスオーバーSUV「レガシィアウトバック」の国内販売を2025年3月末までに終了すると発表しました。かつて存在した「ツーリングワゴン」やセダンの「B4」はすでにラインナップから消えているため、唯一残った「アウトバック」の販売終了をもって「レガシィ」ブランドは7世代・36年の歴史に終止符を打つことになります。 【打倒レガシィ!】ライバルメーカーが販売していた超速ステーションワゴンたち(写真) 「レガシィ」の初代モデルは1989年に「レオーネ」の後継として誕生しました。このクルマはスバルのお家芸である水平対抗エンジン+4WD、完全新設計のプラットフォーム、あか抜けたスタイリングが受けて「日本でステーションワゴンは売れない」との定説を覆して大ヒットを飛ばしました。 「レガシィ」の商業的な成功を受けてライバルメーカーは相次いで対抗馬を登場させましたが、スバルの優位を崩すには至りませんでした。そして、このクルマの高い人気を原動力に、国内メーカー全車を巻き込む形で1990年代に一大ワゴンブームが起きたのです。 従来のステーションワゴンと「レガシィ」の一番の違いは、トップグレードにEJ20G型インタークーラー付きターボエンジンを搭載した「ハイパワー4WDワゴン」の設定があったことでしょう。最高出力250ps(2代目から280ps)を発揮する水平対向4気筒ターボを搭載した「レガシィGT」は、収容力に優れたステーションワゴンでありながら、スポーツカーに匹敵する高い走行性能を保持しており、おまけに雪道を含む悪路にも強い4WDという万能選手ぶりで大変な人気を博しました。 ただし、車重が重い4WDワゴンにスポーツカー並みの動力性能を与えた結果、燃費は悪く、またタイヤやブレーキは高性能なものが必要となるうえ、その消耗がまた激しいという維持費のかかるクルマになっていたのも事実です。
「ハイパワー4WDワゴン」という斬新コンセプト
とはいえ、「レガシィ」が作り出した高性能スポーツワゴンという斬新なコンセプトは他メーカーにも影響を与え、のちに日産は「スカイラインGT-R」のメカニズムを移植した「ステージア260RS」、トヨタは「レガシィ」と似たコンセプトの「カルディナGT-Four」、三菱は「ランサーエボリューションIX」ベースの「ランサーエボリューションワゴン」を発売しています。 また、「レガシィ」のコンセプトはヨーロッパ車にも大きなインパクトを与え、ボルボからは最高出力235psを発揮する「850T-5」がリリースされています。 2代目、3代目、4代目と代を重ねるごとに完成度を高め、人気を維持した「レガシィ」ですが、2000年代に入ると北米市場での人気の高まりから、現地の声に応える形で2009年に登場した5代目から車体サイズを拡大します。これによってボディが肥大化し、デザインがアメリカ人好みのボリューム感のあるものに変わったことで日本のユーザーの好みに合わなくなり、国内の販売台数は下降線をたどるようになりました。 こうして、大きく重くなってしまった「レガシィ」の販売不振の穴を埋めるべく、スバルが2013年に発表したのが「レヴォーグ」です。このクルマは「レガシィ」よりもひと回り小さく、車高がより低いスポーツワゴンとして誕生しました。 以降、スバルの国内販売の主力は「レヴォーグ」となり、2014年に登場した6代目で「レガシィ」は「ツーリングワゴン」を廃止。2020年には国内のセダン不振を背景に「B4」の販売を終了。現行モデルの7代目ではステーションワゴンから派生したクロスオーバーSUVの「アウトバック」のみ国内販売されたのです。