世界中でEVが失速する中、なぜ「東南アジア」では急成長しているのか?
世界のEV(電気自動車)市場が急速に冷え込んでいる。テスラの業績は大幅に落ち込み、中国では大量のEVが放置されているという。また、日本のEV市場も期待通りには広がっていないのが現実だ。 【図表】中国、韓国の2倍まで高騰した“日本の電気代” 2024年の懸案事項とは? そんな中、全く違う様相を見せているのが東南アジアだ。なぜ今、東南アジアでEVが急速に広がっているのか。東南アジア在住で、著書『デジタル・フロンティア』にて発展する東南アジアのリアルを描いた坂田幸樹氏がその理由に迫る。
テスラは失速、中国には「EVの墓場」
米国における2023年のEV普及率(新車の販売台数におけるEVシェア)は、税額控除や規制の導入などによる支援策を背景に約7.6%と前年比で増加したものの、予想されていた市場の伸びと比較すると大幅に下回る結果となった。 需要の伸びが鈍化する中、2024年4月には、競争激化や主要市場での販売が減少したことなどを要因とし、EV大手のテスラが1~3月期決算において最終利益が前年比55%減となったことを明らかにした。 政府の補助金によって急成長した中国のEV産業においても、2019年には約500社の登録があったEVメーカーが、景気低迷と競争激化により、現在はその半分以下にまで淘汰されている。EV製造を打ち切るメーカーは今後も増加する見込みで、撤退した事業者によりEVが大量に放置され、中国には多数の「EV墓場」が出現している。 これらの事態は、市場の過飽和に、航続距離への不安や車両価格の高さ、充電インフラの不足といった課題による購買意欲の冷え込みが重なり合っている結果だといえる。 また、EVとも密接に関連しているESGに関しても、グローバルな熱意は薄れつつある。特にヨーロッパでは企業によるESG報告の質に対する批判が高まっており、形式的な取り組みが増えていることが指摘されている。 実際に2021年の調査では、多くの企業が自社のESG活動を過大に報告しているとの疑念が示された。これにより、投資家たちは真の持続可能性へのコミットメントを見極めることが困難になっており、加えて、環境保護への具体的な改善が見られない場合は、ESG投資の信頼性が問われることも避けられない。