五輪に小池都政… 総選挙の“前哨戦” 東京都議選のポイントは?
都民ファーストが前回の都議選で大勝したのは、「小池旋風」があったからである。今回もし小池知事の支援が得られない場合には、歴史も浅く地域での支持地盤が弱い都民ファースト議員は強い逆風にさらされることになろう。 一方、いったんは切れていた自民党と公明党との関係も改善している。今年3月、両党は都議選に向けた政策協定書に調印している。国政では自公連立政権であるにもかかわらず都政では公明党が都民ファーストと連携しているという「ねじれ」が解消された形である。 小池知事の姿勢次第では、自民党と公明党が連携して都議会を制するという小池都政以前の構図に戻る可能性も大いにある。ただし、コロナ対策の遅れなどから菅内閣の支持率が低迷していることを考えると、小池知事の自民党へのスタンスも微妙である。実際、今年1月に行われた千代田区長選では、小池知事は元都民ファースト都議の候補を応援し、勝利させている。一方で、もし都民ファーストが大敗することになったら、小池知事が同党から距離を置き、自民・公明との連携を強める可能性もあるだろう。
●主張分かれる「五輪」「小池都政」の是非
各党の主張が分かれる最大の争点は、東京五輪・パラリンピック開催の是非だ。自民党と公明党は、都議選公約では五輪開催の是非については触れていない。ただし両党は、会見などでは感染対策を徹底した上で開催すべきと主張している。都民ファーストは、公約に無観客での開催を盛り込んだ。一方、共産党と立憲民主党は今夏の開催には反対の立場である。共産党は公約に五輪中止を掲げ、立憲民主党は「延期か中止」を主張している。 小池都知事へのスタンスも各党の立場が分かれる。都民ファーストはもちろん、自民党や公明党も知事を支持する姿勢である。一方、共産党と立憲民主党は批判的な姿勢を明らかにしている。両党は、知事が都議会に諮らず「専決処分」を繰り返していることや、コロナに関する人流抑制対策について都民への説明が不足していることなどを指摘している。 なお、新型コロナへの対応も重要な点だが、こちらについては各党ともワクチン接種の迅速化や医療体制の強化を訴えており、大きな違いは見られないようだ。 以上の通り、小池知事のスタンスに加え、五輪開催に対する都民の判断が重要なポイントとなる。小池知事が再び「旋風」を起こすことをもくろむのであれば、ひょっとすると知事が五輪の開催方法などに言及することがあるかもしれない。都議選の情勢によっては、小池知事が衆院選直前に国政復帰を表明することも、あながちあり得ないシナリオではないだろう。 ※6月22日夜、小池知事が「過度の疲労」で静養するとのニュースが伝えられた。新型コロナや東京五輪対応などが続いていたが、週内は公務を離れるという。
------------------------------------ ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など