「五輪・コロナ」に終始しない論戦を “国政の先行指標”としての都議選
7月4日投開票(告示は6月25日)の都議選が近づいてきた。スウェーデンの国家予算と同等の15兆円予算、条例、主要な契約といった都政の機軸事項は都議会が決定者だ。その舵取りを担う127人が選ばれる。 過去3回の都議選後の勢力図(画像制作:Yahoo! JAPAN) コロナ対策や、7月23日に開幕予定の東京五輪・パラリンピックの開催の有無、ないし開催の仕方も論戦のテーマとなろう。もちろん当面の課題であることは事実だが、都議の任期は4年間だ。どうすれば子どもたちを含めた都民・国民に夢と希望をもたらせるか。50億円も税金を掛けて都議選を行うからには短期的な当面の課題に固執せず、中長期的な道筋を示すべきだ。(元都庁職員で行政学者・佐々木信夫中央大名誉教授)
都政に見る「振り子の原理」
この10年間は“オリンピック都政”の様相にあった。反面、都民生活をどう導いていくか、そこが手薄になってきた。小池百合子都政は五輪準備が重なったこともあるが、従前の「経済重視・ハード重点」の石原慎太郎都政を引きずったままだ。舛添要一都政が「生活重視・ソフト重点」に移行しかかったが途中降板でうやむやになっている。果たして小池都政はこの先どこへ向かうのか。都議会はそのけん引力をどう発揮するのか、そこがポイントになる。 実は都政には政策の振り子が働いてきた歴史がある(図)。
57年前の五輪のとき、東竜太郎都政は経済重視・ハード重点に力点を置いた。それが革新・美濃部亮吉都政になると福祉・教育など生活重視・ソフト重点に換わった。こういった具合に知事が替わる度に「経済重視・ハード重点路線」と「生活重視・ソフト重点路線」の間で振り子が働き、政策の組み立てが変わってきた。 大都市東京には、国全体の経済をけん引してきた側面と、そこに暮らす都民の生活を充実させるという二面があり、いずれに偏り過ぎてもダメだという意味から都民は選挙を通じて振り子を働かせてきた。都議会は知事とともに都民有権者が選ぶ二元代表制の一翼であり、予算、条例など都政の機軸事項は都議会が決定する。今回の都議選で都民有権者の投票行動がこの振り子を動かすことに大きく関わる。