「また絶対に小さい子を…」「子どもを見ると吸い込まれるように…」執着性と衝動性の強さが別格。驚くべき<小児性犯罪再犯率>その実態
「性的グルーミング」という言葉をご存じでしょうか。これについて、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんは「子どもと信頼関係を築き、関係性を巧みに利用して性的な接触をする行為」と説明しています。今回は、2500人以上の性犯罪者の治療に関わってきた斉藤さんに、「小児性愛障害」や「子どもの性被害」について解説していただきました。斉藤さんいわく、「小児性犯罪者の反復性と常習性、対象への執着心はほかの性加害者と比べても別格」だそうで――。 【グラフ】性犯罪者の類型別再犯率。子供を狙った犯罪での高さが目立つ * * * * * * * ◆子どもを見ると「吸い込まれるように近づいてしまう」 「好みの子どもを見ると、まるでそれに吸い込まれるように近づいてしまうんです」 これは私が勤めるクリニックで、実際にプログラムを受けている当事者の言葉です。 クリニックでは、2006年から痴漢や盗撮、露出、下着窃盗、レイプ(不同意性交)といった性犯罪を繰り返す人を対象とした専門外来を日本で初めて開設しました。 当初から、子どもに性加害をしてきた人(小児性愛障害)もそのなかに含まれていましたが、治療定着率が低く、長続きせず途中でドロップアウトしてしまう事例も少なくありませんでした。 先ほどの当事者の言葉が示すとおり、子どもへ性加害を繰り返す者の対象行為への執着性と衝動性の強さは、ほかの性加害者と比べても別格だといえます。 これは少し古いデータですが、アメリカの研究者ジョナサン・エイブルの有名な性犯罪研究では、「未治療の性犯罪者は生涯に平均して380人の被害者に対し、延べ581回の加害行為をしている」と指摘しています。 これは子どもへの性加害だけではなく、あらゆる性暴力を含みます。 この数字自体、驚くべきものです。
◆性加害を繰り返してしまうことを頭では理解している さらに以前、私がとある地方の刑務所で子どもへの性加害者に対して再犯防止プログラムを実施していた際、参加者のひとりが「僕の場合は、少なく見積もってもその3倍はやってると思います」と真顔で言っていました。 この発言に対して、同席したほかのメンバーも大きくうなずきました。 つまり、ひとりの加害者が1000人を超える子どもに加害行為を行い、しかもそのほとんどが誰にも気づかれず、被害者はそのときは何をされたかわからないことが多いため事件化しない……ということです。 また、刑務所内での再犯防止プログラムが終わった後に、ある受刑者からはこんな本音を打ち明けられたことがあります。「先生、俺このまま刑務所から出たくないよ」「また絶対に小さい子をやってしまうのがわかってるんだ」。 刑務所に収監されている限り、小さい子どもと接触する機会はありません。しかし、刑罰を受けてもなお、いざ出所したら自分が再び性加害を繰り返してしまうことを頭では理解している。 この言葉は彼らのそんな切実な思いを伝えるメッセージに思えて仕方ないのです。