【追悼】東京地検特捜部元検事・堀田力弁護士が語った「ロッキード事件」捜査秘話 「派手な上着にカメラを下げ、サングラスで観光客を装った」田中角栄元総理大臣の逮捕を切り開いた極秘渡米 平成事件史(20)
2月6日、金脈問題で退陣した田中元総理のあとを受けて、総理大臣に就いていた“バルカン政治家”三木武夫は、すぐに「ロッキード事件の真相究明」を表明した。 クリーンなイメージを売りにする三木は、アメリカ側から捜査資料を取り寄せ、政府高官の名前を公表したいと考えていた。 マスコミの報道が過熱するなかで、東京地検特捜部は水面下で捜査を進めた。 捜査の陣頭指揮を執ったのは、のちに検事総長となる”特捜の鬼”吉永祐介(7期)主任検事だった。 吉永は、国税庁と連絡を取りながら、公開された領収書などをもとに証拠の積み上げをめざした。 2月16日に開かれた国会の「証人喚問」に小佐野賢治が呼ばれた。 小佐野は「記憶にございません」を連発、この年の「流行語」となり、テレビで全国中継された証人喚問は、異例の高視聴率を記録し、国民の関心の高さを如実に示した。 その後、丸紅、全日空の役員らへの「証人喚問」も行われたが、役員らは疑惑を全面的に否定。それらの証言はのちに偽証罪に問われることになる。 2月18日、ロッキード事件の捜査方針を決めるための「検察首脳会議」が初めて開かれた。 当時、堀田力(13期)検事はまだ41歳の法務省刑事局の参事官だったが、法律面から意見を述べる立場で出席していた。 捜査を統括する吉永は、事件への慎重な姿勢を崩さなかった。 「アメリカでさえ公開してない秘密捜査資料など、日本の捜査当局が、入手できるはずがない。そもそも日本に渡す義務もない」(吉永) これに対して大使館勤務の経験もあった堀田はこう意見を挟んだ。 「アメリカのSECが持っている未公開資料を入手できる可能性もあります。前例はありませんが、交渉してみる価値はあると思います」 さらに堀田は踏み込んだ意見を述べた。 「アメリカの司法省が捜査協力に応じてくれれば、日本の検事が直接、ロッキードの幹部を取り調べることも可能かもしれません」 堀田の発言に対し、吉永の視線が鋭く向けられた。
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