【追悼】東京地検特捜部元検事・堀田力弁護士が語った「ロッキード事件」捜査秘話 「派手な上着にカメラを下げ、サングラスで観光客を装った」田中角栄元総理大臣の逮捕を切り開いた極秘渡米 平成事件史(20)
さらにコーチャン副会長はこう証言した。 「児玉さんから国際興業グループの小佐野賢治さんを紹介された。小佐野さんに販売戦略などを相談したが、謝礼は、児玉さんに払った一部があてられたと思う」 “政商“と呼ばれた小佐野賢治の名前が登場したことによって、小佐野の“刎頸の友”と言われていた田中角栄元総理大臣の名前が浮上したのである。 小佐野と田中は若い頃から二人三脚で歩んできた親しい間柄。 国際興業グループ創業者の小佐野は田中の最大のスポンサーであり、全日空の大株主だった。 事件の概要はこうだ。ロッキード社が民間航空機「トライスター」や軍用機「P3C」を日本に売り込むために、3つのルートを通じて「政府高官」にカネを渡したという疑惑だ。 「児玉ルート」ロ社の秘密代理人・児玉誉士夫に渡ったとされる「21億円」 「丸紅ルート」ロ社の代理店・丸紅から元総理大臣・田中角栄に渡ったとされる「5億円」 「全日空ルート」ロ社から航空機トライスターを購入した全日空への「2億円」 ■「前例はありませんが、交渉してみる価値はあります」 ロッキード事件は日米のみならず、オランダ、イタリア、西ドイツ、インドネシアなど世界各国で同様の汚職が発覚し、世界規模のスキャンダルに拡大した。 ベトナム戦争が終結した影響で、赤字に転落したロ社は、業績回復の切り札として民間機「トライスター」と軍用機の「P3C」の販売に全力を注いでいた。 「P3C」は敵の潜水艦を見つけるための「対潜哨戒機」である。当時の日本でも「国産」の「対潜哨戒機」の開発が進められていた。 しかし、田中政権下で突如、国産化計画が白紙撤回となり、「輸入」に戻るという不可解な経緯があった。 米国発の大スキャンダルに日本は騒然となった。 2月5日、外電に気が付いた朝日新聞だけが朝刊で「ロッキード社、丸紅・児玉へ資金」と一報を伝えた。 その日の夕刊各紙の一面には「ロッキードの対日工作費は30億円」「丸紅、児玉通じロッキードから政府高官へ」「ロッキードがワイロ商法、児玉に21億円」などの見出しが踊った。
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