【追悼】東京地検特捜部元検事・堀田力弁護士が語った「ロッキード事件」捜査秘話 「派手な上着にカメラを下げ、サングラスで観光客を装った」田中角栄元総理大臣の逮捕を切り開いた極秘渡米 平成事件史(20)
「実は、捜査が進む中で、私は法務省刑事局に異動となりました。そこで、関谷議員らを国会会期中に逮捕するための『逮捕許諾請求』を初めて担当することになったんです」 (堀田) 国会議員には国会会期中に逮捕されない「不逮捕特権」が認められている。 そのため、議員を逮捕するには、国会から許可を得る必要がある。 この手続きは堀田にとって初めての政界捜査となり、特捜部への大きな一歩となった。 時は移り、昭和から平成へと変わった1994年。筆者と堀田が巡り合ったのは、政治家へのヤミ献金をめぐる大型スキャンダルの「ゼネコン汚職事件」だった。 この事件で、東京地検特捜部は中村喜四郎元建設大臣をあっせん収賄罪で立件。 特捜部は、堀田が27年前に手掛けた関谷勝利議員以来となる、国会会期中の「逮捕許諾請求」に踏み切るという決断を下した。 当時、堀田はTBSの「報道特別番組」に出演し、スタジオ解説を担当していた。 普段はソフトな語り口で知られる堀田だったが、この日は特別だった。 27年前、関谷議員の捜査を熟知している元検事として、そのコメントには、いつにも増して力強さがあった。 一方、筆者は司法記者として東京地検前から特捜部の動きを逐一、スタジオの堀田と杉尾キャスターに、生中継で伝える役割を担っていた。 緊迫する状況下で、特捜部の捜査は刻一刻と進展していた。 堀田は筆者のリポートを受けて、静かに確信をもってこう締めくくった。 「国会会期中に議員を逮捕することは、検察当局としては、できれば避けたいというのが本音です。というのも、国会から逮捕許可を得るには、あらかじめ事件の証拠を国会に開示しないといけないからです。そうなると、国会側が主導権、ボールを握っているため、『これを出せ』『あれを見せろ』と次々に証拠開示を要求してきます。 ですが、詳しい証拠を出しすぎると、証拠隠滅の恐れもあり、捜査に支障をきたす可能性があり、非常に苦しい交渉を迫られます。 「他にどこへ金が流れているのか」など党利党略、私利私欲に基づき、様々な証拠を不当に求めてくる議員もいます。 法務・検察当局としては、国会への説明対応だけで多大な労力を費やし、疲労困憊してしまうのです。そうした中で、中村元建設大臣の逮捕許諾請求に至ったのは、現場の検察官たちが本当に頑張った結果だと思います」
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