元世界王者・比嘉大吾が10・26後楽園で因縁相手にバンタム級に上げジム移籍初戦…”琉球の破壊王”が「来年世界」を明確目標に掲げるワケ
プロボクシングの元WBC世界フライ級王者、比嘉大吾(25、Ambition)が10日、オンラインで会見し、10月26日に後楽園ホールで、日本バンタム級13位の堤聖也(24、角海老宝石)と、ノンタイトルのバンタム級10回戦で対戦することを発表した。ジム移籍初戦で、バンタム級での「来年の世界挑戦を明確な目標」にしている陣営にとって、大事な“前哨戦”。比嘉は、「KO決着。倒して勝ちたい」と宣言した。
別人のようにパワーアップ
“琉球の破壊王“がパワーアップして帰ってくる。 野木丈司トレーナーがこんな証言をした。 「2月とは別人」 比嘉は2018年4月の世界戦で体重を落とせずに計量失格でタイトルを剥奪され、無期限のライセンス停止処分を受けたが、昨年、その処分が解除され、今年2月にリング復帰した。だが、約2年ぶりの復帰戦となった試合は、試合勘が鈍っているだけでなく、豪快なパンチの威力が影を潜めてしまっていた。なんとかボディ攻撃で6回TKOで勝ったが、15試合連続KO勝利の日本タイ記録を作った比嘉の姿には、ほど遠かった。 だが、白井・具志堅ジムを離れ、野木トレーナーとのコンビを復活させ、4階級制覇王者の井岡一翔(31)が初速するAmbitionジムへ移籍してから、止まっていた比嘉の時間が動き始めたという。 「ボクシング勘もパワーも戻っている。(フライ級の)世界王者時代よりパワーは増していると思う。バンタム級でも体のフレームは大きい。(WBC世界バンタム級王者の)ウーバーリの上体も大きいが(比嘉と)照らし合わせて試合を見てもそう感じる」
なぜか? 進化の理由を聞くと、比嘉自身は、住居を横浜に住む野木トレーナーの近くへ移したことで、朝、晩の二部練習が、トレーナーがつきっきりの内容の濃いものとなり、「毎日きつい練習をやって、フィジカルももちろん、総合的に、いい練習ができているせいかも」と言う。 野木トレーナーは「実はなぜここまでパワーが増したか謎の部分が多い」としながらも、進化の理由をこう分析した。 「質の高い練習が理由なのは間違いないですが、気持ちの入れ替えのスイッチじゃないですかね。(コンビ復活の)その日からパンチが変わった。技術的に打ち方を変えたわけではない。不思議だが、戦いのスポーツでは、そういうことがある」 パンチに魂が宿り、それを徹底的に反復練習することで、パワーアップして蘇ったのである。 階級を2つ上げたことで減量苦からも解放された。引き換えに「バンタム級でパワーが通用するのか?」の課題が突き付けられたが、その不安も解消されているという。 「バンタムでやる不安はあまりないんですけど…あるのかな、どっちかな(笑)。だた、ずっといい練習ができている。準備をしっかりとしたらいいボクシングができると思う。フライのときはコンビネーションの中で倒したことの方が多い。バンタムになってから一発のパンチで倒すことも大事になってくる。よりディフェンスでパンチをもらわないことも大事になってくる」 比嘉はバンタム級での戦いを楽しみにしている。 対戦相手の堤は因縁の相手だ。 新型コロナの影響で海外からボクサーを呼べず、国内では比嘉のハードパンチが敬遠され相手探しに苦労したが「いちはやく手を挙げてくれた」(野木トレーナー)のが堤だった。比嘉が、日本人選手と対戦するのは、プロ3戦目の2014年11月に藤井敬介(宇都宮金田)に1回TKO勝ちして以来、5年11カ月ぶりとなるが、今回の相手は曰くつきだ。比嘉は宮古工業時代に九州学院の堤と2度対戦して2敗しているのである。いずれも判定で「1回目はだいぶポイントが離れて負けて、2回目はギリだった」とは比嘉の回想。比嘉は宮古工業を卒業すると、沖縄の英雄、具志堅用高氏に誘われプロ入りして、一度は世界の頂点にのぼりつめた。 一方の堤は、平成国際大に進み、2018年3月にプロデビューしている。現在6戦5勝(4KO)1分の無敗ホープで、唯一の引き分けは、今年1月にDANGAN山中慎介presents GOD’S LEFTバンタム級トーナメントの決勝で中嶋一輝(大橋)と引き分けたもの(優勢ポイントで負け)。攻撃的なボクシングでチャンピオンメーカーの大橋ジムの期待の星を苦しめた。海外から中途半端な相手を呼ぶよりもなかなかの好カードである。