「私が倒れたら誰も見る人がいない」強度行動障害の27歳息子...母は『老障介護』に不安 施設を40か所以上見学も「パニックがあると断られてしまう」
施設探し、5年で40か所以上見学したが…
しかし、探し始めて5年、40か所以上見学に行ったというが、涼太さんが入所できる施設は見つかっていない。一体、なぜなのか?障がい者の入所施設を取材すると、強度行動障害のある人の受け入れが難しい「現実」が見えてきた。 大阪府岸和田市にある障がい者の入所施設・山直ホーム。40人いる入所者のほとんどに最重度の知的障害と強度行動障害があるが、48人の職員がシフト制で24時間、寄り添った支援を続け、みな、穏やかに生活を送っている。 しかし、この施設への入所待ちは現在130人にのぼり、受け入れてもらうのはかなり難しい。
「強度行動障害」のあるTさん(48)の場合
48歳のTさん。もともとは自宅で73歳の母親が1人で世話をする老障介護状態だった。ところが2年前、母親が突然、救急搬送された。診断は「肺がんの疑い」。息苦しさで声も出せない中、身寄りが一切いない母親は相談支援事業所の職員に「娘の今後を託したい」と懇願した。 (せんなん生活支援相談室 嵯峨山徹子さん)「これがその時のメモなんですけど 筆談で部屋のここに銀行のカードが入ってますとか。(娘の)行き先が見つからない中で本当に無理されてここまで生活されたんだろうなと思います」 搬送の5日後、母親は亡くなった。Tさんが1人取り残されることになると職員から話を聞いた山直ホーム。待機者の中から優先してTさんの入所を受け入れた。 Tさんは施設で暮らす中でも時折、パニックを起こすことがある。取材した日、散歩していると突然、道端で横になってしまった。 (Tさんに話す職員)「くつ履いて帰るで、はだしでは帰られへん。足痛いで、くつ履いて帰ろうか、ほんなら。痛いのせんといて、見てこれ血が出た、痛いなー。帰ろ、帰ろ」 職員2人がかりの声かけで、次第にTさんは落ち着きを取り戻した。
入所施設側の受け入れ『限界』
強度行動障害のある人のパニックに対応するためには、障害への知識を持った職員が数多く必要だが、現状、多くの施設では人が足りていない。山直ホームもすでに「限界」だという。 (施設長・叶原生人さん)「一施設だけの頑張りでは限界がありますので、待機者については国が施策として(入所施設の数を)充実させていくことが根本原因の解決につながると考えます」 一方、国は障がい者を施設に入所させるのではなく、地域で受け入れる政策を進めている。 入所施設の代わりに推奨するのが、地域にある一般住宅で少人数で暮らすグループホームなどだ。ただ、強度行動障害のある人の受け入れは広がっていない。