「手洗いに数時間」「4日と9日は学校に行けない」 有名俳優や元トップアイドルが相次いで公表…専門医が明かす「強迫症」の知られざる実態
「強迫症」もしくは「強迫性障害」という病名を、何かの折りに目にしたことがある、という方もいるかもしれない。だが、まだまだご存知ない向きが大半だろう。その一方で、最近になって強迫症に対する関心が急速に高まりつつあるのも事実だ。病状は多岐にわたるが、その一部は理解や共感を得られやすいという特徴がある。さらに芸能人の“カミングアウト”が相次いでいることも大きいという。 【写真】有名人の告白によって社会の理解が進むことも。「強迫症」について公表した芸能人 ***
人気俳優の佐藤二朗は2月、自身のXに《病。キツイ。マジでキツイ。そのメンタルの病》と投稿し、大きな反響を呼んだ。 病状について具体的な言及がなかったことで心配の声が殺到。そのため佐藤は《「強迫性障害」。小学生時に発症。あまりにキツく「memo」という映画をつくる。根治を諦め、共生を決める》とポストで追加の説明を行った。 ちなみに映画「memo」は佐藤が脚本と監督を担当し、2008年に公開された。主人公である平凡な女子高校生は、思い浮かんだ言葉を書き記すことができないと、自分が壊れるほどの不安に襲われる──というストーリーだ。 さらに3月、佐藤が出演した主演映画「変な家」が公開され、舞台挨拶が行われた。その際、報道陣から「体調は大丈夫ですか?」と質問され、笑顔で「大丈夫です」と回答。その様子がワイドショーなどで取り上げられ、強迫症についても触れられた。 昨年12月には、モーニング娘。の元メンバーでタレントの道重さゆみの所属事務所が、公式サイトで《いくつか特定の仕事上で過度なこだわりや過敏な行動があり、本人から強い不安感や恐怖心があるとの申し出がありました》と発表。診察を受けたところ「強迫性障害」と診断され、病状の改善が確認されるまで一部の活動を制限するとした。
手洗いがやめられない
2020年には朝日新聞の佐藤陽記者が自身の病状を「手洗いがやめられない~記者が強迫性障害になって~」の連載記事で発表。読者からの反響が大きかったことから、23年6月、同じタイトルで星和書店から書籍が出版された。 10月11日からは映画「悠優の君へ」が東京・吉祥寺で公開され、順次全国で上映される予定だ。福原野乃花監督も7歳の時から強迫症を発症し、自身の経験を元に映画を完成させた。毎日同じ時間に手洗い場でひたすら手を洗い続ける女子高校生と、その同級生の友情を描いた作品だ。 アメリカの国際強迫症財団(IOCDF)は10月の第2週を「強迫症啓発週間」に提唱しており、世界各国で様々なイベントが開催された。注目が集まりつつある強迫症とはどんな病気なのか、福原監督の主治医である、兵庫医科大学精神科神経科学助教の向井馨一郎氏に取材を依頼した。 「強迫症は、不安や不快感を伴う特定のイメージや考えである『強迫観念』が脳裏によぎり、その不安や不快感を解消させるため『強迫行為』を繰り返すという2つの症状から成り立っています。強迫観念の具体例を挙げれば、『自分の手は非常に汚れているのではないか』といったもので、患者さんも不合理な考えもしくはイメージだとはよく分かっているのです。にもかかわらず、数時間も手を洗い続けるという『強迫行為』が止められません」