70歳母の安楽死をきっかけに仏門へ スイス出身の古刹・高雲寺住職 ジェシー釈萌海さん 一聞百見
15世紀の創建と伝わる古刹(こさつ)。3月24日に当時の住職が急逝し、新たな住職を探していた。しかし、市街地から離れた海岸沿いにある寺では、なり手を探すのも一苦労だ。この地に限らず、少子高齢化や過疎化に悩む地では近年、宗派問わずこうした問題に直面している。
僧侶になって6年。その間、住職になるために必要な教師資格も取得した。「どこかに私でもできる質素な山寺でもあれば」。いつかは住職に、けれど「外国人」「女性」のハードルは高いと思い込んでいた中で、知人の僧侶から高雲寺の住職就任の打診があった。
初めて寺を訪れ、出迎えた総代や役員から説明を受け、境内を案内された後のことだった。
「さあ、ジェシー決めようや」「一緒に(住職になるために必須の)住職修習行こうや」。総代らからこう呼びかけられた。
「この私で、外国人女性でいいの?」「住職の経験ないよ」。突然の積極的な歓迎に戸惑いながらも尋ねた。
「なんも文句はない。やる気がある人なら問題ない」「この場でともに学んでくれたら十分。ともに歩んでいこう」。互いに相手を見つけた、そんな感じだった。居並ぶ人々の温かい言葉がうれしかった。
5年前から、東本願寺近くの圓徳寺(えんとくじ)(京都市下京区)で葬儀・法要を手伝っていた。偶然通りかかり、手入れされた庭の美しさにひかれて住職に話しかけたことがきっかけで、手伝いを頼まれるようになった。「この寺のおかげで『ペーパー住職』にならなかった。不思議な縁に導かれ、手伝うことで住職を引き受ける準備ができた」と語る。
就任に向けて、今年8月末に総代と本山での住職修習に参加したほか、掃除や整備のために京都市内の自宅から通う日々。その時は決まって、門徒が敦賀駅や寺近くのバス停に迎えに来てくれた。住職の呼び名「御院(ごえん)さん」と呼ばれ、うれしさとくすぐったさを感じながら、60~90代の門徒とともに掃除やお勤めに取り組んでいる。