なぜメダルを逃した久保建英は号泣し「今までサッカーをやってきてこんな悔しいことはない」と語ったのか
そういう思いとは、イコール、3位決定戦で一敗地にまみれて五輪を終えること。吉田と酒井は2012年のロンドン五輪でも準決勝でメキシコに、3位決定戦では韓国に敗れている。再び4位を経験した吉田は涙をこらえながら、仲間たちへエールを残した。 「完敗でした。でも、胸を張って帰りたいと思います。これで終わりじゃないし、それでもサッカー人生は続いていくので」 まもなく33歳になる吉田を中心に、オーバーエイジたちがピッチの内外でポジティブな影響力を与えてくれた日々を「めちゃくちゃ楽しかった」と振り返った久保は声を詰まらせ、震わせ、再び涙しながら、申し訳なく思う気持ちも込めて必死に言葉を紡いだ。 「結果として手ぶらで家に帰ることになりますし、いままでサッカーだけをやってきてこんな悔しいことってないし…………この気持ちを忘れないようにできればと思います」 吉田が言及したように、サッカー人生はまだまだ続く。久保の場合は、ラ・リーガ1部の新シーズンが13日に開幕する。現状ではレアル・マドリードの所属だが、EU圏外枠の関係で3シーズン続けて他チームへ期限付き移籍して武者修行を積む予定だ。 スペイン国内の報道ではレアル・ソシエダか、2019-20シーズンに所属したマジョルカが候補にあげられている。いずれにしても慌ただしくスペインへ戻り、新天地を正式に決めた上で合流し、遅ればせながらポジション争いに参戦しなければいけない。 9月2日には来秋にカタールで開催されるワールドカップ出場をかけた、オマーン代表とのアジア最終予選初戦(会場未定)が待っている。フル代表でも継続的に招集されてきた久保は吉田や酒井、遠藤とともに、今度は新たな戦いに臨むことになる。 「次のチャンスが自分にあれば、しっかりと今度こそ勝利に貢献したいですけど……本当に今日の負けは重いなと思います」 何度も口を突いた悔恨の言葉は、6試合すべてに先発し、チーム最多の3ゴールをマークした東京五輪にかけていた熱き思いの証となる。20歳の素顔をのぞかせた久保は、流した涙の分だけ強くなって再び、そして雄々しくチャレンジをスタートさせる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)