2017年「物理学賞」は誰の手に? 日本科学未来館がノーベル賞予想
2017年のノーベル賞発表まで一週間を切りました。10月2日(月)の生理学・医学賞を皮切りに、3日(火)に物理学賞、4日(水)は化学賞と自然科学3賞を発表。平和賞は6日(金)、経済学賞は9日(月)です(文学賞は未定)。日本科学未来館では毎年、その年の自然科学系3賞を受賞するにふさわしいと思う研究テーマ・研究者を同館の科学コミュニケーターが各賞ごとに紹介しています。 【図】2017年生理学・医学賞は誰の手に? 日本科学未来館がノーベル賞予想 物理学賞の今年のみどころは、何といっても「重力波の観測」が受賞するかどうかでしょう。2016年に観測結果が報告され、「アインシュタインの100年の宿題を解いた」ともいわれているこの偉業に賞が贈られるのか、はたまた他のテーマの受賞となるのか、注目が集まります。
近年の受賞テーマの傾向も味方する「重力波」
物理学は、その名前が示すとおり「物(もの)の理(ことわり)」、つまり「ものの性質や自然現象についての普遍的なルール」を見出し、解明していく学問です。その分野は幅広いのですが、ノーベル物理学賞の対象範囲を説明するときには、大ざっぱに以下の2つがあると分類しています。(1)物性:物質の示す物理的性質、(2)宇宙:天文学や宇宙物理学――の2つです。 そこで、物性・宇宙の2分野に注目して近年のノーベル物理学賞を分析してみると、「宇宙(2013年)→物性(2014年)→宇宙(2015年)→物性(2016年)」というサイクルが続いています。この傾向が今年も続くのであれば、2017年は宇宙分野からの選出が有力であり、その意味でも宇宙からの信号である重力波が受賞する可能性は高いと考えられます。 しかし。もちろん重力波以外にも、ノーベル賞級のすばらしい研究は数多くあります。今回はもう1テーマ、物性分野から光格子時計についての研究もご紹介します。
重力波の初観測による天文学への貢献
《キップ・ソーン(Kip S. Thorne)博士/レイナー・ワイス(Rainer Weiss)博士》 冒頭から「重力波!重力波!」と連呼しているものの正体とは、連星などの動きに伴って生じる「空間のゆがみを伝える波」のことです。(※連星とは、2つ以上の天体が互いに引力を及ぼし合って、くるくる軌道運動しているもの) 水面で手を動かすと波が立つように、空間を質量のあるものが移動すると、その周りの空間がゆがみます。そのゆがみの波を「重力波」といい、質量が大きければ大きいほど重力波も大きくなり、宇宙のはるか遠方へと伝播し、いずれは地球に届きます。