2017年「物理学賞」は誰の手に? 日本科学未来館がノーベル賞予想
光格子時計は、正確な時を刻む時計研究の針を大きく進めました。しかし、そこまで正確な時計を、どうして作るのでしょうか? その答えは、アインシュタインの相対性理論の中にあります。 相対性理論によると、その人が立っている場所の高さによって、わずかに重力の大きさが異なるので、時間の進む速さが変わります。具体的には、1cm高いところにいる人が持っている時計は、低い人の時計に比べ、0.000000000000000001(10のマイナス18乗)秒ほど速く時間が進むのです。
光格子時計を使えば、そのわずかなズレが分かります。逆にいうと、光格子時計をいくつか用意してズレを調べれば、「高さや重力の違いを検出できる」ことになるのです。つまり、香取先生の研究により、時計は「正確な時を刻む道具」であると同時に「重力の大きさを測る超高感度センサー」の機能を得たのです。 それを利用すれば、地表面で重力を測るだけで、周囲より重い物質である地下鉱床を探査できるかもしれません。また、周囲の岩石よりも重いマグマの移動を観測することで、火山噴火の前兆を知ることができるかもしれません。 これは、ノーベル賞が贈られる基準である「人類ための最大の貢献」となるのではないでしょうか?重力波に引けを取らないほど革新的なこのテーマの受賞にも注目が集まります。 ◎予想=科学コミュニケーター・坪井淳子/志野渚
10月3日午後6時45分から発表
2つの予想を紹介しました。いかがでしたか? 「果たして重力波が本当に受賞するのか?」「もし他のテーマが受賞するならば、そのテーマは重力波に負けず劣らずエキゾチックな研究に違いない…!」「2つの予想のどちらにもアインシュタインの功績が。やっぱすごいな」―ノーベル物理学賞の楽しみ方は無限大のようです。発表は10月3日(火)午後6時45分(日本時間)からですので、お楽しみに。
------------------------------------------ ◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 雨宮崇(あめみや・たかし) 1988年、山梨県生まれ。京都大学大学院エネルギー科学研究科を修了後、デジタル教材編集者を経て現職。