「便秘症」は治療が必要な病気。子どもの便秘が慢性化するのを防ぐために、正しい知識を身につけて【専門医】
綿棒浣腸をルーティンにすると、自分でうんちを出せなくなる!?
――たまひよアプリのユーザーに便秘対策で行っていることを聞いたところ(※)、「綿棒浣腸」「おなかのマッサージ」「体操」「市販の浣腸薬」が挙がりました。これらの効果を教えてください。まず、綿棒浣腸について。 萩原 綿棒浣腸の有効性については、実は専門医の間でも意見が分かれているのですが、生後1歳未満の赤ちゃんで、効果を実感できるなら、やってもいいと私は考えています。 私が勤務する大阪母子医療センターでは、綿棒の先にワセリンやオリーブオイルをつけ、片方の手で両足を持ち上げ、もう一方の手で綿棒の先(頭の部分)を肛門の中にゆっくりと入れ、肛門を外側に少し広げるように、綿棒をゆっくり円を描くようにして刺激すると、うんちが出ることが多いです。 ――綿棒浣腸はクセにならないから毎日しても大丈夫、と考えているママ・パパもいます。 萩原 綿棒浣腸をお世話の一環のようにルーティンで行うと、その刺激がないとうんちを出せなくなる可能性が指摘されています。「便秘になるのが心配だから綿棒浣腸をする」というケアは避け、行うのは便秘のときだけにしてください。 ――赤ちゃんがうんちをするとき、いきんで泣くのは便秘だからですか。綿棒浣腸は必要でしょうか。 萩原 それは「乳児排便困難症」だと考えられます。腹圧をかけることと、骨盤底筋群をゆるめることの協調がまだできないことで起こるとされるものです。生後9カ月未満の赤ちゃんで、うんちを出す前に10分程度いきんで泣くけれど、出るうんちはやわらかくて、ほかに健康上の問題がない場合は、赤ちゃんが排便のトレーニングをしていると考えてください。乳児排便困難症は便秘ではないので、綿棒浣腸は不要です。 ――次に、おなかのマッサージと体操について。 萩原 乳児のマッサージの研究をたくさん集めて解析した研究では、マッサージが乳児の便秘に有効である可能性があると報告されています。ただし、どのような方法が便秘に効果的なのかは、まだわかっていないんです。今後研究が進めば、マッサージも立派な治療の1つになるかもしれません。 体操を含めた運動が、便秘に有効であるかはわかっていません。でも、体を動かすことが子どもの健康に欠かせないのは、言うまでもありません。 ――市販の浣腸薬を使うことについてはどうなのしょうか。 萩原 市販の浣腸薬と医師が処方する浣腸薬は、同じ成分のグリセリンが入っています。市販薬は手軽に購入できて便利ですが、年齢で量が決められているので、体格によっては量が少ないことも。医師が処方する浣腸薬は、体重から換算した投与量を使うことができるので、効果を得られやすいかもしれません。 浣腸薬を使うときも、綿棒浣腸と同様、浣腸薬の先端にワセリンなどを塗ってすべりをよくすると、子どもに不快感を与えにくくなります。 ――2013年に「小児慢性機能性便秘症ガイドライン」が出てから10年以上がたっています。ガイドラインが改定される予定はありますか。 萩原 現在、信州大学の中山佳子先生を作成委員長として改定が進められていて、2025年春か遅くとも夏には、新しいガイドラインが出る予定です。今回の改定では、乳児や重症心身障害児、神経発達症児の便秘にフォーカスした項目も含まれる予定です。 便秘が悪化すると子どもの生活の質が低下してしまいます。新しいガイドラインができることで、そうした理解を広めることができたら…と期待しています。 お話・監修・図版提供/萩原真一郎先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部 便秘が慢性化すると、長期にわたって子どもにつらい思いをさせてしまうことになります。便秘が長引く場合は治療が必要になるということを、忘れないようにしましょう。 ※調査は2024年9月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです(有効回答数171人)
萩原真一郎先生(はぎわらしんいちろう)
PROFILE 大阪母子医療センター消化器・内分泌科 副部長。2004年東京慈恵会医科大学卒業。2010年埼玉県立小児医療センター総合診療科、2016年UCSF research fellow、2018年大阪母子医療センター消化器・内分泌科医長を経て、 2020年より現職。専門領域は 小児消化器・肝臓・栄養、炎症性腸疾患、消化管内視鏡。3人の子の父親。 ●記事の内容は2024年10月の情報であり、現在と異なる場合があります。
たまひよ ONLINE編集部