日本車は中国車に勝てるのか? BYDだけじゃない! 東南アジアでシェア拡大を狙う中国企業の強かさ。
補助金の減額で状況は一変。しかし……
そうした状況下で迎えたBIMS2024では中国車8ブランドが出展し、大きな存在感を示していた。振り返れば、昨年のBIMS2023でも中国車の進出は目立ち始めていたが、まさか1年でここまでの状況になっているとは予想もしていなかった。しかも、事務局によれば、2025年はすでに中国車の4ブランドが出展を希望しており、これが実現すれば日本車を完全に逆転することになる。まさに、状況は“日本車危うし!”にあると言っていいだろう。 では、どうして中国勢がこぞってタイ市場に繰り出したのか。それはタイ政府が進めるEV支援策の存在が大きい。タイ政府は30年に国内生産の3割をEVにする目標を掲げており、2022年から23年まで1台あたり15万バーツ(約60万円)の補助金を給付してきたからだ。これにより、充電インフラが整備されてきたバンコクなど大都市周辺で富裕層たちがEVを購入。昨年のEV販売台数は前年比7.8倍の約7万6000台にまで拡大することになった。これはタイで販売される総販売台数の約1割に達する。 さらにタイ政府は2024年から2027年までの4年間を対象に、輸入EVの購入に補助金を出す「EV3.5」を導入。これにより補助金額は最大で10万バーツ(約40万円)にまで引き下げられた。タイ国内でEVを生産することが条件とはなるものの、それでも中国国内で鈍化しているEV販売の現状をカバーするには、この支援策は魅力的と映っているのだろう。タイでのEV生産を急ぐ中国メーカーが相次いでいるのだ。 ただ、ユーザーはこの補助金の減額に即座に反応した。2024年に入ると1月は補助金給付の駆け込み登録で過去最高を記録したが、24年2月になるとその反動もあって急減。前年同月比で34%も落ち込んでしまった。その結果、23年にEVで4割のシェアを持っていたBYDは86%減、「MG」ブランドを有する上海汽車系は80%減、「GWM」ブランドの長城汽車は73%減となった。これはEV需要が一巡したこともありそうだが、何よりも補助金の給付額が下がった影響が災いしたことは間違いない。 こうして迎えたBIMS2024だったが、中国メーカーが採った戦略は大幅な値引きだった。タイ国内でEVの最大手であるBYDが、最量販車種である「ATTO3」の最新モデルの価格を従来モデルよりも18%も安い価格で提供することを発表したのだ。それ以外の車種についても、期間中の購入に限定した特別価格を設定するなど、割安感を全面に打ち出す戦略を採ったのだ。 トップシェアを持つBYDが値引き戦略に打って出たことで、他の中国メーカーも対抗措置を執らざるを得ない。ゼロ金利キャンペーンなどさまざまな優遇措置を与えることで、顧客をつなぎ止める策を相次いで発表したのだ。 そして、この効果はBIMS2024会期中の販売実績にさっそく表れた。なんと予約されたEVが全体の32.78%にも達したのだ。総予約台数こそ、かろうじてトヨタが8540台と1位を確保したが、2位にはBYDが5345台で肉薄。トップ10の状況を見ても日本車と中国車が半分ずつ分ける格好となったのだ。