最下位阪神の打撃不振理由は「調整の失敗」なのか?
阪神OBでもあり、ヤクルト時代に故・野村克也氏のID野球の薫陶を受け、楽天、巨人、西武で、作戦参謀を務めた橋上氏は、「阪神は他球団に比べて全体的にバットが振れていない。調整不足に思える」という見方をしている。 「阪神が開幕ダッシュに失敗した原因のひとつが巨人との開幕戦の負け。菅野に勝てた試合を継投のミスなどがあって逆転負けをし、あれが3連敗につながった。その後の連敗の理由は、打てないことに尽きる。近本、糸原ら調子の上がってきていない選手はバットが振れていない。振れている選手が一人もいないのだ。バッティングには波があるので全員が揃って悪くなることもある。悪くなったとき、まず、その原因を究明すべき。それがコーチの仕事。阪神首脳陣は、今の打線低迷の原因を何だと考えているのだろうか」 打撃は水物と言われる。プロ野球において打撃スランプの解決は永遠のテーマである。あの西武の山賊打線でさえ一時的な打撃不振に苦しむことが少なくない。楽天、巨人、西武でコーチを経験してきた橋上氏も何度かそういうスランプに遭遇してきた。 「打線不振は、イコール、バットが振れなくなるということ。私の経験では、その原因の一番は疲労だった。とくに開幕から一回りした後、15試合を過ぎたくらいに一度、疲労が出てくる。開幕の特別な緊張も影響しバットスイングが鈍くなってくるのだ。そういうときは、一度、疲労を抜いてやり、その後、練習メニューを工夫し調子を上げていくような作業に入るのだが、阪神のバットが振れていない理由は疲労ではないだろう。開幕までの調整の失敗といわざるをえない。つまり振り込み不足だ」 バットが振れていない理由が、調整不足にあるとすれば、そこに陥る特別な事情が阪神にはあった。藤浪晋太郎、伊藤隼太、長坂拳弥の3人の新型コロナウイルス感染が3月下旬に判明したため、阪神のチーム活動が完全に停止。個人練習の自粛を余儀なくされ、キャンプ、オープン戦で積み上げてきた練習の“貯金“がゼロになった。全体練習を再開されたのは5月23日。そこから”突貫調整”が始まったが、あまりに時間が足りなかった。 加えて開幕から関東圏、名古屋で試合をする長期ロードとなったため、練習量の確保が難しくなった。新型コロナウイルスの感染予防のため、遠征先の行動が激しく制限され、若手が、これまでのようにビジターチームの室内練習場を借りての早出特打ちを簡単にできないという問題にも直面した。 それでも橋上氏は「バットスイングはホテルでもできる。自覚の問題」と指摘した。