4階級制覇王者の井岡一翔が今日注目V3戦…JBCは“ノーモア・ドーピング騒動”体制で世界戦実施
井岡は年間最高試合となった田中との大晦日の試合でドーピング騒動に巻き込まれた。調査が行われ濡れ衣は晴れたが、JBCの不手際で、名誉を傷つけられ「僕と同じ目にあうような選手が二度と出ないようにして欲しい」と訴えてきた。 この試合を実現するために7月12日に「一つのけじめ。僕自身が次へ進んでいかねばならない」と拒否してきたJBCの謝罪を受け入れて“和解”はしたが、納得がいったわけではない。 「僕と家族が味わった苦労や苦しみを考えると謝られて済むという解釈じゃない」とも語り、今回の試合でのドーピング検査について、こう持論を展開させていた。 「改めて言うことはない。二度と、こういう問題が起こらないようにして欲しいといろんな場で話してきた。それはJBCに伝わっていると思っている。いつもと変わらず正々堂々と戦うだけ。ドーピング検査の手順? いろんな流れに任せるしかない。JBCはJBCでやるべきことをやってもらいたい」 そう投げかけられたJBCは、今回のタイトル戦で改めて管理体制を問われることになるが、“ノーモア・ドーピング騒動”を徹底する方針を固めた。 検体の管理が杜撰だったために腐敗、しかも、警察にタレ込んで検体を押収され再検査が不可能になるなど、数々の不手際を起こして井岡側に迷惑をかけた当事者である永田理事長、浦谷信彰執行理事、安河内剛・前事務局長、羽生孝次・現中部地区事務局長の4人が、今回のタイトル戦では解呪に“出禁”となった。現在、第三者による情報漏洩調査委員会が調査を行っており、4人がその調査対象になっていることが理由だが、井岡サイドを安心させ、2度とドーピング騒動を起こさないという自浄措置とも言える。 ただ、現在進めている国際基準に準拠するような新しいドーピング検査の体制、マニュアル作りは間に合わなかった。またルールミーティングでも今回のドーピング検査のやり方について試合後に実施すること以外、井岡陣営に何も詳しい説明はなかったという。 今回は、WBOのスーパーバイザーに指名されたJBCの成富毅・事務局長が陣頭指揮を執り、厳格な体制のもと、ドーピングの検体摂取は、試合後に実施され、選手本人がサインをした上で封印。検体は腐敗しないようにすぐさまクーラーボックスに入れられ、その後、冷凍保存し、検査機関に送付される手順となっている。 一方で井岡が入れているタトゥー問題についても厳格な姿勢で臨む。JBCルールではタトゥーは認められておらず、大晦日の試合では隠すために塗っていたファンデーションが汗や接触で薄れ、タトゥーが露わになったことで、批判の声が井岡自身だけでなく、管理不足のJBCにも向けられていた。 今回はJBCが、汗や接触で消える可能性が低いスプレー式の黒色、ベージュ色の2層を吹き付ける塗剤を用意。控室でグローブを装着する前にタトゥーが見えない措置がしっかりと施されているかどうかを確認するという。 ただでさえ新型コロナ禍という緊急事態の中、ドーピングのトラブルに巻き込まれた井岡にしてみれば、強さを全世界にアピールする圧倒的な決着の仕方で、9か月ぶりのリングでの「リ・スタート」を飾りたいだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)