なぜドーピング潔白が証明された井岡一翔は「絶対に許せない」とJBCへ怒りをぶちまけたのか…検体を腐らせトップは辞任否定
井岡サイドも「ドーピング違反を立証しなければならない立場にはないが、潔白を証明するために」と、スポーツ医学やドーピングの検査機関の関係者まで、さまざまな分野の専門家の意見を聞いた上で、東北医科薬科大学医学部法医学教室の高木徹也教授、奈良明奈助教に鑑定を依頼。JBCからA検体、B検体の検査資料を提供された上で鑑定書を作成して倫理委員会に“無実”を主張する際に共に提出していた。 倫理委員会の結論と井岡サイドの鑑定結果は、ほぼ同じで、また答申書では、JBCアンチ・ドーピング規定第 8 条(2)に基づく告知・聴聞、弁明の機会を井岡に与えず、しかも3 月 5 日に警察に相談、再検査に必要なB検体を押収され、潔白を証明するための正式な手続きが踏めなくなったことを「JBCの重大な手続き上の瑕疵がある」と厳しく断罪していた。 服部弁護士は「こちらの主張は100パーセント認められた。不満はない」と、結論に納得。井岡自身も「潔白だったことにかんしては満足している」としながらも苦悩の日々があったことをこう告白した。 「ここまで、この件が大きくなって、この1か月半で僕の人生はかなり変わった。家族がかなり心配していたし、僕の人生、家族の人生がこのまま終わっていくのかという不安もあった」 週刊誌報道が先行。何も確定していない段階で、大麻を含むドーピング違反の物質が検出されたという情報だけが拡散し、妻や息子を誹謗中傷するようなコメントもSNSに氾濫した。井岡自身のインスタにも心無いメッセージが届いた。JBCの対応が遅れたため、沈黙を守り続けてきた井岡は、地獄のような日々を過ごすことになっていた。 「正直辛かった。自分のことだけでなく家族や子供に対してだったりね。インスタをやっている立場として、コメント、メッセージを全部全部相手にして答えていくのは違う。関係者からは(誹謗中傷を)相手にせず、話をする機会を作ると言ってもらっていたが…世の中で問題になっている誹謗中傷には傷つけられると思った」 JBCの永田有平理事長は、オンライン会見で、今後の井岡の名誉回復の手段として、「HP上で潔白を明らかにしたい。まるで井岡君が禁止薬物をやっているようなことを週刊誌に書かれて、迷惑をかけておりますので誠意をもって対応するしか手がない。直接謝罪したい」と語った。だが、人生を左右されかねぬ疑惑をJBCの数々の失態により負わされることになった井岡の憤りは、当然、JBCに向く。 「いろんな不備が原因で(こんな事態になり)謝罪だけでは納得がいかない。現役を続ける上で今の(JBCの)体制でやっていくのには怖いという気持ちがある。僕以外のボクサーにこういう思いは絶対にしてほしくない。選手が安心できてパフォーマンスに集中できる体制を作ってもらいたい」 JBCは、大晦日の試合数時間前に摂取したA検体、B検体をしばらく常温で放置し、年末年始で、検査機関が休みに入っていたためJBCの職員が自宅に持ち帰ったが、そこでも家庭用冷蔵庫に入れていた。 A検体は簡易キットで検査されるが、その説明書には「すぐに検査をしないときは、2~8℃で冷蔵保存してください。冷蔵保存は最長 2 日間とし、それを超える場合は検体を-20℃ 以下で凍結させて保存してください」と記載されていたが、 1月5 日に病院に持ち込まれるまでの 6 日間にわたり冷凍保存されることはなく、しかも病院までは、リュックサックにそのまま入れられ、常温で電車、徒歩により輸送された。取り扱いを間違った検体は、腐敗していたと考えられA検体からでた大麻成分(THC)は擬陽性であった可能性が高いという。 B検体は精密検査に出されたが、そこではTHC成分は検出されず「エフェドリン、フェネチルアミン、チラミン」の3種類の禁止薬物が検出された。エフェドリンは「1万分の1」のごくわずかな量で、しかも、この3物質とも「検体を摂取した時点では存在しなかった物質が腐敗により繁殖生成された可能性を否定できない」とされた。