「宙わたる教室」出演のイッセー尾形さん 凱旋公演PRで福岡に、街の変わりように驚き
来年1月末から3日間、福岡市・天神で一人芝居「イッセー尾形の右往沙翁(さおう)劇場」を開く。上演する短編8本は、本紙文化面での連載随筆「『今』をまとめて」(7~9月)と並行して作り上げた新作。「時代は刻々と変わっていくが、しなやかに乗り越えていく庶民を楽しく演じたい」と語る。 【写真】さまざまな人間を演じるイッセー尾形さん NHKで放送中のドラマ「宙(そら)わたる教室」など多くの映像作品で活躍する一方、30年以上公演を続けてきた日本の一人芝居の第一人者でもある。新作ではクラスのパワーゲームに翻弄(ほんろう)される中学教師や入院中の高齢者など老若男女8人が登場。令和の風潮に戸惑いつつも自分なりに解釈し、奮闘する姿を描く。「どんな状況でも深刻ぶりたくない。『右往左往』を肯定的に捉えたい、というのがテーマです」 ネタづくりは本紙連載の執筆期間と重なり、影響を大きく受けた。エッセーでは北九州の小倉や福岡の西新で過ごした幼少期に時計の針を巻き戻しながら、演劇を目指したきっかけや海外公演での珍事などを軽やかにつづった。「書けば書くほど昔の話ですから、哲学的なことを考えちゃいましたね。過去とはなんぞや、みたいな」 子どもの頃眺めていた福岡の空、田んぼでバケツ一杯捕ったザリガニ、19歳で門をたたいた東京・新宿の演劇学校…。鮮やかによみがえる「過去」は当時の時点では「今」であり、現在の自分は「今」の集積であるという思いを連載タイトルに込めた。 一人芝居も、さまざまな過去を抱えた登場人物を「今」という舞台で見せる試みだという。「今度の登場人物たちも、いろんな事情があってここにいる。奥行きのある人物にしたい」 2023年に福岡公演を10年ぶりに復活させ、3年連続の西鉄ホール上演となる。PRのため1年ぶりに福岡を訪れ、街の変わりように驚いた。「子どもの頃は永遠だと思っていた景色もどんどん変わっていく。一方で、自分の中には変わらないものも確実にある」。変化を受け入れる登場人物の姿を通し、観客の「今」にも力を与えたいと願う。 (川口安子) ◇福岡公演は来年1月31日午後7時、2月1、2日の午後3時の3回。全席指定5500円。チケットぴあなどで販売。