とんかつ屋で「脂を取り除け」と無理難題…“お客様は神様”が生んだ「カスハラ客」のヤバすぎる実態
厚生労働省によると、カスハラとは「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの」が定義となっている。 ちなみにクレームとは一部の例外(悪意ある客)を除いて、サービスの向上や品質の改善などを目的に、客が店の将来のことを考え、意見することであるので留意したい。今回は、昨今急増するカスハラ被害と店側の対策について解説したい。
カスハラ客の4分の3が男性
カスハラが社会問題化しているが、まず申し上げたいのは店のことがどうでもよければ、黙って次から来なければいいだけだ。しかし、あえて苦言を呈したり、意見を申し出たりするということは、ある意味では店のことを考えてくれている証明でもある。 店側が真摯に受け止めて改善し、より最適な店にしてほしいという客の願いである。確かに悪意を持つ客も存在するが、それらとは、同じ扱いにしないほうがいい。 そもそもカスハラを行う人の目的は、店への嫌がらせなどで、理不尽で悪質ないじめのことである。UAゼンセン(繊維や流通などの労働組合)のカスハラに関する2024年の調査結果によると「2年以内でカスハラの被害にあったことがあるか」を問うと、46.8%が「被害にあった」と回答。カスハラをした客の4分の3が男性で、9割が推定で40代以上だったとのこと。 客の推定年代別では、60代が29.4%ともっとも多く、50代が27.2%、70代以上が19.1%となっており、高齢客のカスハラが多いようだ。主なカスハラは多い順で、暴言、威嚇・脅迫、同じクレーム、長時間拘束、セクハラ行為などである。対策の法整備は徐々に進んではいるが、店などサービス提供側は戦々恐々で、心を壊す人も多い。
カスハラに対する意識が高まる
最近は社会全体に、カスハラに対する意識が高まってきているのに、いまだに金を払う自分たちが偉いと勘違いしている年配も存在する。 来店された顧客に料理とサービスを提供し、「ありがとう」とお礼を言われてやりがいを感じるのが従業員だ。それなのに、ホテルや旅館では、従業員に土下座を強要したり、過剰なサービスを繰り返し求めたりする悪客もいる。いくら仕事とはいえ、そういう惨めな姿を家族には見せたくないだろう。昨年12月に施行された改正旅館業法では迷惑客の宿泊を拒否できるようになったが、まだ客の意識は定着していないのが実情だ。 ファミレスチェーンでも、客のカスハラで傷ついた従業員を守るよりも、カスハラ客の側に立ったり、大きな騒動で本部への自分の評価が下がるのを嫌い、何もなかったように本部への報告をしない事なかれ主義の店長もいる。従業員を守るより自分を守るのを優先する店長は情けない。そういう店長が人の上に立ってはいけない。